西宮東口駅

西宮東口駅：阪神本線の高架化と消えた駅舎

西宮東口駅は、兵庫県西宮市に存在した阪神電気鉄道本線（現：阪神本線）の駅です。2001年3月3日、阪神本線の高架化工事による西宮駅との統合に伴い、その歴史に幕を閉じました。本稿では、開業から廃止までの軌跡、高架化工事の過程、そして駅周辺の変遷について詳述します。

開業から廃止まで

西宮東口駅は1905年（明治38年）4月21日に開業しました。以来、長きにわたり地域住民の足として利用されてきましたが、1991年に開始された阪神本線西宮市内連続立体交差事業によって、その運命は大きく変わることになります。この事業は、久寿川駅から堀切川までの区間を高架化するという大規模なものでした。

1995年（平成7年）の阪神・淡路大震災による運休を経て、工事は継続されました。下り線は1998年（平成10年）5月に高架化が完了。しかし、西宮東口駅の廃止は、上り線高架化が完了する2001年3月3日まで延期されました。これは、西宮駅の位置変更が廃止条件だったためです。上り線高架化に伴い西宮駅が移転し、西宮東口駅は西宮駅に統合、そして廃止となったのです。

高架化工事の詳細

高架化工事は、極めて複雑な手順で行われました。まず、従来線の北側に上り仮線を、従来の上り線上に下り仮線を敷設。仮線を使いながら、既存の下り線上に高架橋を建設し、下り線を高架化しました。その後、下り仮線を撤去し、上り線用の高架橋を建設、最終的に上下線が高架化されるという方法です。

西宮東口駅は、相対式ホーム2面2線の構造でした。改札口は各ホーム西端にあり、ホーム間の移動はできませんでした。駅舎は東川という小さな川の東側に位置し、踏切に対応した歩行者専用の地下通路も備えていました。しかし、この地下通路は高架化に伴い撤去されました。

仮線の設置には困難が伴いました。駅周辺は住宅が密集しており、仮ホームを設置できるスペースが不足していたため、仮線は駅全体を西方へ約150メートル移動させ、東川の西側に設置されました。そのため、工事期間中は上下線が道路や川を挟んで離れた位置にある時期もありました。下り線高架化後も、上り線が仮線のままだったため、高架上に下り仮設ホームが設置されました。この仮設ホームは、バリアフリー設備も備えた、通常の駅と遜色のない構造でした。

上り線高架化と同時に駅が廃止されると、仮設ホームも撤去されました。駅舎、エレベーター、プラットホームなどは全て撤去されましたが、高架橋には駅の跡が残っています。現在では、保線用の資材置場などに使用されています。

駅跡には、地上駅時代の駅の写真が焼き付けられたプレートが設置されたモニュメントが残り、その存在を伝えています。また、かつては路線図に西宮東口駅が表示されていましたが、廃止後は黒テープで隠されていました。

駅周辺の変遷

西宮東口駅周辺は、かつて西国街道が通る西宮市街の東端でした。駅名もこの地理的条件に由来しています。周辺には、西宮市役所、兵庫県立西宮病院などの公的施設が多く集まっていました。

駅跡の北側には、かつて西宮東口駅前商店街がありました。駅廃止の方針決定時には反対運動も起こりましたが、廃止後はほとんどの商店が閉店しました。商店街のゲートも撤去され、その面影はほとんど残っていません。

路線バスは阪急バスが運行していましたが、駅廃止に伴い停留所の名称も変更されました。

西宮東口駅は、高架化という時代の流れの中で姿を消しましたが、その存在は、駅跡に残るモニュメントや人々の記憶の中に生き続けています。

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