西山国師遺跡霊場

西山国師遺跡霊場は、浄土宗西山派（西山浄土宗、浄土宗西山禅林寺派、浄土宗西山深草派）の祖であり、法然の高弟である証空（西山国師、西山上人とも）ゆかりの寺社、全21箇所を巡る霊場巡拝です。

寺院の数にちなみ、西山国師十六霊場、あるいは西山国師十六遺跡霊場とも呼ばれ、朱印には「西山国師十六霊場」と記されています。1976年に西山三派によって設立された「三山遺跡顕彰会」が創設した霊場巡りであり、札番付き寺社16箇所のほか、客番の寺社が5箇所存在します。

当霊場は西山国師・証空の足跡を辿る霊場であるため、浄土宗西山三派の寺院だけでなく、浄土宗（鎮西派）や浄土真宗といった浄土系の寺院、さらには真言宗系や天台宗系の寺院、神仏習合の影響を受けた神社も含まれているのが特徴です（本地垂迹では八幡神の本地仏は阿弥陀如来とされています）。1976年から1977年にかけて、専用の納経帳である「宝印帳」やガイドブックも発行されました。

札所は近畿地方に多く所在しますが、福島県、東京都、神奈川県、新潟県、長野県、石川県、愛知県、岐阜県など、西山国師・証空が足跡を記した1都2府10県に及んでいます。日本の霊場巡りの中でも、最も広範囲に霊場が点在しているものの一つです。

しかし、西山国師・証空の知名度が弘法大師・空海や円光大師・法然らに比べて低いこと、浄土宗西山3派の規模が鎮西派などに比べて小さいこと、広範囲に広がる巡礼地の巡拝が困難であることなどから、巡礼を始める人は多くありません。寺院側も積極的にPRしていないため、現在は巡礼者はごく少数です。

それでも、浄土宗西山深草派の総本山である誓願寺では、2024年3月現在も1977年発行の専用納経帳が販売されており、インターネットでの通信販売も行われています。比較的札所が集中している近畿地方では、現在でも月に数人以上の巡礼者が各寺院を巡って朱印を求めているそうです。三鈷寺や當麻寺奥院で拝観の際に渡されるパンフレット、浄橋寺で無料で配布されるパンフレットには、西山国師遺跡霊場札所であることが明記されています。西蓮寺・當麻寺奥院・叡福寺・四天王寺・誓願寺の公式HPにも、同様の記載が見られます。

白河の関の朱印所である白河神社の社務所には「西山国師遺跡十六霊場第一番札所」の表示があるなど、非常にマイナーではあるものの、忘れ去られてはいない霊場巡りと言えるでしょう。ガイドブックは長く1976年のものが売れ残っていましたが、現在は絶版となっています。

霊場一覧
寺社名は専用納経帳の表記に準拠します。（ ）内は補足です。

注1・「白河の関」は、その跡地に建つとされる白河神社の社務所が朱印所となっています。しかし、神社の下の県道に面して建つ社務所は、基本的に土・休日の10:30から15:30しか開いていません。開くとされている日でも、神社側の事情や天候などにより社務所が開かなかったり、開く時間帯が変わったりすることがあります。確実に朱印を受けるためには、電話などで確認することをおすすめします。書き置きの朱印なら無人時でも用意されています。
注2・専用納経帳の住所は、古い地名である東京都大田区調布鵜ノ木町となっています。調布市内ではありません。
注3・善光寺自体は無宗派ですが、実際には天台宗の大勧進と浄土宗の大本願によって運営されています。宗派表記は専用納経帳に準拠しています。善光寺本堂・大本願・大勧進のいずれの納経所でも、日本各地の霊場巡りの納経帳には「善光寺本堂」の朱印が押印されます。同じ浄土系なので大本願を札所とする説もありますが、専用納経帳には「定額山善光寺」としか書かれていません。「善光寺大本願」の朱印を受けても間違いではありません。
注4・金沢の法然寺は基本的に土休日のみ朱印の押印を行っています。
注5・延暦寺文珠楼は正しくは「文殊楼」と表記します。明らかな誤植ですが、ここでは専用納経帳の表記に合わせます。「文珠」の表記が正しい寺院もあります。
注6・光明寺は、普段は拝観無料で無料駐車場もありますが、紅葉期のみ拝観料が必要となり、駐車場も有料となります。

☆印のある寺院は、納経関係者が数人しかおらず、事前に電話で確認しないと留守などで朱印を押印してもらえない可能性があります。

〇印のある寺院は、納経関係者が1人しかおらず、必ず電話確認が必要です。

◎は札所の堂、または納経所が有料拝観区域にあり、拝観料が必須の札所です。

□は寺の一部に有料拝観区域があるものの、札所の堂および納経所は無料区域にある札所です。

参考文献
「生ける念仏　西山国師遺跡霊場めぐり」1976年「三山遺跡顕彰会」発行
「西山国師遺跡霊場宝印帳」1977年「三山遺跡顕彰会」発行

関連項目
* 法然上人二十五霊場

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