白河の関

白河の関：歴史と文学、そして現代における意味

古代の要衝、白河の関

白河の関は、古代日本の奈良時代から平安時代にかけて、都と陸奥国（現在の東北地方）を結ぶ東山道の要衝に設けられた関所です。「みちのくの玄関口」として歴史に名を刻み、その所在地は現在の福島県白河市旗宿付近とされています。この地は、下野国（現在の栃木県）と陸奥国との国境にあたり、現代においても関東地方と東北地方を分ける境界となっています。

白河の関は、鼠ヶ関、勿来関とともに「奥州三関」の一つに数えられ、その重要性を示しています。白河の関より北の地域は、「白河以北」や「河北」と呼ばれることもあります。

歴史

白河の関の設置時期は正確には分かっていませんが、9世紀前半には、5世紀前半に設置されたと認識されていました。当初は、ヤマト政権が北方の蝦夷に対抗するための前線基地としての役割を担っていましたが、ヤマト政権の勢力が北進するにつれて、軍事的な意義は薄れ、陸奥国との国境[[検問所]]としての役割が残りました。

六国史には、718年に陸奥国から「白河」など五郡を分割して石背国を設置したという記事が見られます。その後、728年には白河軍団の新設が許可され、769年には白河郡の人物に賜姓が行われるなど、白河地域は重要な拠点であったことがわかります。また、780年には、陸奥鎮守府副将軍が白河の神に祈って危機を脱したという記録も残っています。835年には、俘囚の出入りや不正商品の検問を長門国関と同様に取り締まることが許されました。

文学的な象徴へ

平安時代以降、律令制度の衰退とともに、白河の関は軍事的な要衝としての機能を失っていきました。しかし、遠い「みちのく」の象徴として、和歌の歌枕に用いられ、文学的な感傷を呼び起こす存在となりました。平兼盛が詠んだ「たよりあらばいかで都へ告げやらむ今日白河の関は越えぬと」は、和歌における初出例として知られています。

また、源頼朝が奥州藤原氏を討伐した奥州合戦の際には、頼朝の命を受けた梶原景季が「秋風に草木の露をば払わせて、君が越ゆれば関守も無し」という歌を詠みました。江戸時代には、松尾芭蕉が「おくのほそ道」で白河の関を訪れ、「心許なき日数重なるままに、白河の関にかかりて旅心定まりぬ」と記しています。

廃止後と現代

関の廃止後、その遺構は長らく失われていましたが、1800年に白河藩主・松平定信が文献を基に考証を行い、現在の白川神社のある場所が白河の関跡であるとしました。明治時代には、白河以北の東北地方は内戦に敗れた「賊地」として蔑視され、「白河以北一山百文」という言葉も生まれました。

しかし、1897年には、宮城県の実業家である一力健治郎が東北軽視への反発から『河北新報』を創刊しました。また、平民初の首相となった原敬も、俳号を『一山』としたのは、東北蔑視への抵抗だったとも言われています。

1960年代の調査で、古代の防御施設が発見され、1966年には「白河関跡」として国の史跡に指定されました。2022年には、高校野球で東北地方の学校が初めて優勝した際、「優勝旗がついに白河の関を越えた」と表現され、大きな歓喜を呼びました。

現代の白河関

現代においては、福島県警察が国道4号線沿いに「白河検問所」を設置し、関東地方から東北地方への犯罪流入を防ぐ役割を担っています。これは「現代の白河関」とも呼ばれています。

高校野球における「白河の関越え」

高校野球の甲子園大会において、東北地方の学校は長年優勝を果たすことができず、「優勝旗は白河の関を越えていない」とされていました。1915年の第1回大会以降、東北勢は決勝進出を12回経験しましたが、いずれも敗退していました。そのため、東北勢の優勝は「白河の関越え」と呼ばれ、長年の悲願となっていました。

1997年以降、白川神社は、白河の関越えを祈願して東北6県の出場校に「通行手形」を贈呈するようになりました。また、東北勢が優勝できない理由として、「雪国のため練習機会が少ない」という意見もありました。

2004年の夏の甲子園では、北海道の駒澤大学付属苫小牧高校が初優勝しましたが、「陸路で白河の関を越えていない」という見方が強く、東北勢の優勝への期待は継続していました。社会人野球では、2006年にTDKが優勝し、「黒獅子旗は白河の関を越えた」と称されました。

そして、2022年の夏の甲子園で、仙台育英高校が東北勢初の優勝を果たしました。これにより、「優勝旗が白河の関を越えた」と大いに歓喜されました。選手団は優勝旗とともに新幹線で宮城県に帰還し、陸路での白河の関越えも達成しました。白河神社には多くの参拝客が訪れ、「仙台育英高校優勝記念」の御朱印が人気となりました。

まとめ

白河の関は、古代の関所としての役割だけでなく、文学や文化の中で重要な象徴としての意味合いを持ち続けています。また、現代においても、交通や警察活動における境界線として、その名残を見ることができます。そして、高校野球における「白河の関越え」の達成は、歴史的な意義を持つ出来事として、長く語り継がれることでしょう。

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