川喜田二郎

川喜田二郎の生涯と業績

川喜田二郎（かわきた じろう）は、1920年5月11日に三重県津市で生まれ、2009年7月8日に89歳で亡くなった日本の地理学者、文化人類学者です。東京工業大学名誉教授の称号を持ち、その学術的な貢献は多岐にわたります。

生い立ちと学歴

川喜田は、京都府立第一中学校（現：京都府立洛北高等学校・附属中学校）で山岳部に所属し、山歩きに熱中しました。この頃、山岳部の先輩である今西錦司らとの出会いが、彼の後の研究活動に大きな影響を与えました。第三高等学校理科を経て、京都帝国大学文学部地理学科に進学。大学時代には山岳部で今西錦司、森下正明、梅棹忠夫、吉良竜夫らと探検隊を結成し、カロリン諸島や大興安嶺山脈を探検しました。1943年に京都帝国大学文学部地理学科を卒業し、文学士号を取得しました。

大学卒業後の活動

大学卒業後、川喜田は昭和通商株式会社に勤務しましたが、1944年には陸軍に召集されました。終戦後、木原生物学研究所嘱託を経て、東海大学予科教授に就任。その後、大阪市立大学法文学部（現：文学部）地理学教室助教授に転じ、この頃からネパールを研究フィールドとするようになりました。1958年には西北ネパール学術探検隊の隊長を務めました。

1960年に東京工業大学助教授に就任し、翌年には教授に昇格しました。1963年から1964年には、東南アジア稲作文化調査団を組織し、団長を務めました。1964年には日本ネパール協会を設立。1967年には、情報整理と発想のための手法であるKJ法を開発・発表しました。1969年に東京工業大学教授を辞任し、移動大学を開始しました。

1970年には川喜田研究所を設立し、代表を務めました。1978年には筑波大学教授に就任。1985年に筑波大学を退任し、名誉教授となりました。同年4月からは中部大学教授として教鞭を執り、1991年に東京工業大学名誉教授となりました。

研究内容と業績

川喜田は、生態学的な人文[[地理学]]を研究し、今西生態学の人類学方面への拡張を担いました。また、豊富な野外調査の経験を基に、情報整理と発想のための手法としてKJ法を開発しました。KJ法は、ブレインストーミング後の整理法として、野外科学のみならず企業などでも広く応用され、その著書である『発想法』（正・続）と、『知の探検学』は大きな評判を呼びました。

チベット関連の活動

川喜田は、チベット文化の理解者としても知られており、その異名から「チベット二郎」とも呼ばれていました。1953年にはマナスル登山隊へ参加しています。1963年と1964年の民族学調査をきっかけに、アンナプルナ山のふもとの山村の活性化と環境保全のため、NGO「ヒマラヤ保全協会」を結成しました。また、中華人民共和国政権のチベット侵攻に際しては、抗議の論陣を張り、ガンデンポタン（亡命政府）を支援し、訪中を拒否しました。

家族と親族

実父は陶芸家、実業家の川喜田半泥子（川喜田久太夫）です。川喜田家は代々伊勢商人であり、川喜田は16代当主です。また、銀行家の川喜田壮太郎、明治生命保険勤務の川喜田俊二、百五銀行創業者の養子となった川喜田洋などを兄弟に持ちます。姉の川喜田澄子は民族学者岡正雄の妻です。長男の川喜田八潮は文芸評論家として活動しています。

受賞歴

川喜田は、1978年に秩父宮記念学術賞、1984年にマグサイサイ賞、1993年に福岡アジア文化賞学術研究賞を受賞しました。

著作

川喜田は、多数の著書を執筆しており、その著作集は全13巻と別巻1巻からなる『川喜田二郎著作集』として中央公論社から出版されています。また、『人間　人類学的研究：今西錦司博士還暦記念論文集』など共編著も多数あります。

関連資料

川喜田の業績をまとめた書籍として、『川喜田二郎の仕事と自画像―野外科学・KJ法・移動大学』や、研究論文として「古写真でたどる川喜田二郎とヒマラヤ保全協会の50年史」などがあります。

川喜田二郎は、その多岐にわたる活動を通じて、地理学、文化人類学、環境問題、情報整理法など、様々な分野に大きな影響を与えた人物です。

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