西日本旅客鉄道吹田工場

JR西日本吹田工場：近畿地方の電車を支えた歴史

かつて大阪府吹田市にあったJR西日本吹田工場は、近畿地方の鉄道車両の整備の中核を担っていた重要な施設でした。東海道本線岸辺駅と吹田駅間に位置し、JR貨物吹田機関区に隣接していました。近畿統括本部の管轄下にあり、JR西日本唯一の電車専門工場として、長年にわたり数多くの電車の整備に貢献しました。気動車を取り扱わない点が特徴的でした。

組織と役割

吹田工場は、所属車両の全般検査に加え、改造や更新工事といった幅広い業務を行っていました。検査対象は、自所配置車両だけでなく、森ノ宮電車区、奈良電車区、福知山電車区、日根野電車区、京都総合運転所、宮原総合運転所、さらには敦賀地域鉄道部敦賀運転センター車両管理室配置の125系電車や、嵯峨野観光鉄道の車両なども含まれていました。

また、大阪府高槻市にあった高槻派出所は、吹田工場に統合される前は高槻電車区として運用され、京阪神緩行線で使用される車両の夜間滞泊基地として機能していました。統合後も留置線は残されていました。

歴史と変遷

吹田工場の歴史は古く、1921年（大正10年）11月1日に、湊町駅（現在のJR難波駅）にあった鉄道省湊町工場が廃止され、その機能が移転したことで開設されました。その後、日本国有鉄道を経て、1987年（昭和62年）4月1日の国鉄分割民営化によりJR西日本に継承されました。この間、1933年（昭和8年）2月には電車修繕を開始、1957年（昭和32年）3月には客車修繕を高砂工場に移管するなど、業務内容の変遷がありました。さらに、1983年（昭和58年）4月には貨車修繕を廃止しています。

組織改編も幾度となく行われ、近畿運行本部吹田工場、京都支社吹田工場、近畿統括本部吹田工場と名称が変更されました。そして、2012年（平成24年）6月1日、検修体制の見直しにより、吹田総合車両所へと改称され、長きにわたる歴史に幕を閉じました。

所属車両と略号

吹田工場所属車両には、近畿統括本部を意味する「近」と吹田を意味する「スイ」からなる「近スイ」という略号が記されていました。京都支社管轄時代には「京スイ」でした。高槻派出所に207系が配置されていた時期には「京スタ」または「近スタ」という略号が使われていた時期もありました。

整備済みの車両には「吹田工」または「ST」という略号が記されました。2019年4月1日時点での所属車両は、クモヤ145形電車6両のみでした。過去には、207系電車、223系9000番台電車（1両）、213系電車（2両）なども所属していました。特に223系9000番台電車と213系電車の2両は、「U@tech」（ユーテック）として改造され、沿線無線WAN対応の車上設備を搭載していましたが、2019年3月31日に廃車されています。

吹田工場の遺産

吹田工場は、長い歴史の中で近畿地方の鉄道車両整備に大きく貢献しました。その役割は、現在も吹田総合車両所によって引き継がれています。かつて存在した吹田工場の歴史は、日本の鉄道史において重要な一ページを刻んでいます。

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