西村一義

西村一義九段：将棋界に貢献した名棋士の生涯

西村一義九段は、1941年12月14日、愛知県名古屋市に生まれた将棋棋士である。2006年の引退まで、将棋界において長きに渡り活躍した彼の生涯を紐解いていこう。

愛知から東京へ：プロ棋士への道

西村九段は2歳の時に岐阜へ疎開した後、愛知県に戻り、中学2年生の頃に将棋を本格的に始めた。その後、プロ棋士を目指して上京。生活はクリーニング店での住み込み勤務と並行しながら、将棋道場に通って腕を磨いた。関屋喜代作四段、大内延介四段、中原誠九段ら著名棋士に指導を受けながら、厳しい修業の日々を送った。一度はプロを諦め将棋から離れた時期もあったが、その後再び将棋の世界へ舞い戻り、1961年、アマ名人戦で東京都代表に選ばれる。佐瀬勇次名誉九段の紹介を受け、20歳の若さで奨励会試験に合格し、1級で入会した。

プロ入りとタイトル挑戦：昭和16年組の活躍

1963年に四段となりプロ棋士となった西村九段は、1969年、五段の身分ながら王位戦で大山康晴名人に挑戦。五段でのタイトル挑戦は史上初の快挙であったが、結果は2勝4敗で敗れた。同世代には大内延介、高島弘光、山口英夫といった棋士がおり、彼らと共に「花の昭和16年組」と呼ばれ、若手時代から注目を集めた。

順位戦では、B級1組に昇級後、2度の降級を経験しながらも、12期に渡り戦い続けた。タイトル戦への挑戦は18年ぶりとなる1987年、棋聖戦で桐山清澄棋聖に挑戦するも敗退。この18年というタイトル戦への登場間隔は、当時、史上最長であった。（女流棋戦では弟子の山田久美女流が25年の間隔で記録を残している。）

着実に勝数を重ね、1984年に八段、1999年には九段に昇段。そして2006年、長年の棋士生活に幕を閉じ、引退した。

棋界への貢献と指導者としての側面

西村九段は、1974年から1992年まで日本将棋連盟理事を務め、2005年には専任理事として総務・経理を担当するなど、組織運営にも貢献した。また、大内延介九段と並び称される振り飛車穴熊の先駆者としても知られており、居飛車穴熊も得意とした。田中寅彦九段によると「穴熊党副総裁」と呼ばれていたという逸話も残る。

2016年には秋の叙勲で旭日双光章を受章。その功績は将棋界にとどまらず広く認められた。

弟子たちの活躍と不正使用疑惑への発言

西村九段は多くの弟子を育て上げた。中でも藤井猛九段、三浦弘行九段は2001年にA級に同時昇級を果たし、タイトルも獲得するなど活躍。さらに、藤井猛九段、三浦弘行九段、星野貴之七段は升田幸三賞を受賞している。2016年には弟子の三浦弘行九段が将棋ソフト不正使用疑惑で処分を受けた際、週刊ポスト紙上で強い抗議の声を上げたことも記憶に新しい。

西村一義九段は、棋士として、指導者として、将棋界に多大な貢献を残した。その功績は、後世の棋士たちにとって大きな指針となるだろう。

主要成績

通算成績：778勝742敗
タイトル挑戦：王位戦1回、棋聖戦1回
棋戦優勝：東西対抗勝継戦2回
将棋大賞：東京将棋記者会賞（2002年度）
* 表彰：公式戦通算600勝達成（将棋栄誉賞）、公式戦通算700勝達成

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