西田佐知子歌謡大全集

『西田佐知子歌謡大全集』は、2007年3月28日にユニバーサルミュージックから発売された、歌手・西田佐知子の魅力が詰まった5枚組のCD-BOXです。規格品番はUPCY-9096/100。主に1960年代に輝かしい活動を展開した西田佐知子の代表的な楽曲から、初めてCD化される貴重な音源まで、幅広いセレクトによる全111曲に加え、特別音源も収録されています。

本大全集は、その収録内容によってディスクがカテゴライズされています。Disc 1からDisc 3までは「シングル・コレクション」として、当時のシングルレコードの発売順に楽曲が収められています。これによって、西田佐知子の音楽スタイルの変遷や発表当時の空気を感じ取ることができます。ただし、これは彼女が発表した全てのシングルを完全に網羅したものではありません。このパートには、彼女のキャリアを代表する大ヒット曲「アカシアの雨がやむとき」（第13回・第20回NHK紅白歌合戦歌唱曲）や、1964年の東京オリンピック開催年にリリースされ大きな話題となった「東京ブルース」（第15回NHK紅白歌謡戦歌唱曲）、そして1970年にリバイバルヒットし、現役最後の紅白出場曲（第21回）となった「女の意地」などが含まれています。また、1971年に関口宏氏と結婚されて以降、公の芸能活動は控えめになったものの、レコード歌手としての活動は1982年頃まで続けられており、この時期の音源もDisc 3に数曲収録されています。しかし、現時点で最後のシングルとされる「テレビを見ている女」は残念ながら未収録となっています。

Disc 4は、他アーティストの楽曲をカバーした録音を中心に構成されており、西田佐知子の表現力の幅広さを堪能できます。内山田洋とクール・ファイブのデビュー曲として知られる「長崎は今日も雨だった」のようなムード歌謡調のナンバーから、小川知子が歌唱した「ゆうべの秘密」、ピンキーとキラーズの「恋の季節」、森進一の「港町ブルース」や「花と蝶」、美川憲一の「柳ヶ瀬ブルース」など、当時のヒット曲やスタンダードを彼女ならではの歌声で聴くことができます。

Disc 5は、エキゾチックな魅力を持つ外国のポップスやスタンダードナンバーを選曲したディスクです。特に有名なのは、彼女が初めてNHK紅白歌合戦に出場するきっかけとなった代表曲の一つである「コーヒールンバ」です。その他にも、「月影のキューバ」「日曜はいやよ」「ボーイ・ハント」など、当時の洋楽ヒット曲を日本語詞でカバーした楽曲が収録されています。このディスクには、ボーナス・トラックとして、1967年10月に発売されたアルバム『たそがれの恋 西田佐知子ヒット・アルバム』に封入されていたフォノシートの音声が復刻収録されています。これは、レコード総売上1000万枚突破を記念して制作されたもので、西田佐知子と前田武彦氏、水木かおる氏、藤原秀行氏の4人による放談が収められており、西田佐知子本人の話し声という大変貴重な記録を聴くことができます。

CDの装丁も凝っており、CDレーベルはアナログ・レコードをイメージしたデザインとなっています。プラスティック製のスリムCDケースは5枚それぞれが独立しており、異なるカラー写真がジャケットとして使用されています。歌詞は、CDケースサイズの一冊のブックレットにまとめられており、主に当時のEP盤に封入されていた歌詞シートをそのまま転記したものとなっており、当時のジャケット写真なども掲載されています。ブックレットの巻頭には数ページにわたりカラーのレコードジャケット写真が掲載されているほか、前田武彦氏からの寄稿文や、巻末には音楽ライターによる詳細な解説も収録されており、資料性も非常に高い内容となっています。これらの5枚のCDとブックレットは、特製の紙製三方背ボックスに収められています。

この『西田佐知子歌謡大全集』は、長きにわたる彼女の歌手活動の軌跡を網羅し、代表曲からカバー、洋楽まで、その多岐にわたる音楽性と魅力を改めて発見できる、ファンにとって非常に価値の高い作品と言えるでしょう。

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