親切好き

親切好き：行き過ぎた親切心と、その結末

1952年、[メトロ・ゴールドウィン・メイヤー]より公開されたアニメーション短編映画『親切好き』(原題：BUSY BODY BEAR)は、ディック・ランディー監督によるユーモラスかつ風刺の効いた作品です。本作では、他人を助けることの大切さと同時に、行き過ぎた親切心や、他者の意図を無視することの危険性を痛烈に問いかけています。

物語の中心人物は、クマのバーニーです。新聞で「困っている人には手を貸しましょう」というスローガンを読んだバーニーは、川でダム建設中のビーバーに遭遇します。ビーバーは自分一人で十分対応できる小さなダムを建設中でしたが、バーニーはそんな事情を無視し、勝手に工事に参加し始めます。

バーニーの作業は、遊び半分で能率も悪く、ビーバーを何度も困らせます。ビーバーの意向を無視し、何度も危険な目に遭わせながらも、バーニーは手伝いを止めません。ビーバーはバーニーの邪魔を必死に阻止しますが、彼の熱意は止まりません。

やがて小さなダムが完成しますが、バーニーはさらに大きなダムを建設しようとします。ビーバーが反対しても、「もっと大きい方がいい」と、ビーバーを柱に縛り付けてまで工事を強行します。

解放されたビーバーが目にしたのは、谷を埋め尽くすほどの巨大なダムでした。バーニーは満足げに帰宅しますが、巨大なダムによって自分の家まで水没してしまいます。皮肉にも、バーニーの家はビーバーの新しい住処となってしまったのです。

この物語は、単なる喜劇としてだけでなく、公共事業における計画性の欠如や、住民の意向を無視した行政のあり方を風刺しているようにも見えます。バーニーのキャラクターは、善意を持って行動するも、結果的に周囲に大きな迷惑をかける、無能で無計画な政府機関を象徴しているかのようです。一方、ビーバーは、政府の意向に振り回される地域住民や地方行政を象徴していると考えられます。

バーニーの行動は、一見すると親切に見えますが、それは彼の自己満足に過ぎず、ビーバーの意図や状況を全く考慮に入れていません。この対比によって、真の親切とは何か、そして他者への配慮の大切さを改めて考えさせられます。

アニメーション技術もさることながら、本作のユーモラスな描写と皮肉に満ちたストーリーは、今日でも多くの人々に笑いと考えさせる機会を与えてくれます。TBS版『トムとジェリー』で放映されたこともあり、日本でも広く知られる作品となっています。

スタッフには、監督のディック・ランディーを始め、フレッド・クインビー（制作総括）、グラント・シモンズ、ロバート・ベントレー、マイケル・ラー、ウォルター・クリントン（アニメーション制作）、ジャック・コズグリフ、リッチ・ホーガン（脚本）、スコット・ブラッドリー（音楽）といった、当時のMGMを代表する才能が集結しています。彼らの高い技術と創造性が、この傑作アニメーション短編の誕生に繋がったと言えるでしょう。

登場人物であるクマのバーニーとビーバー、そしてダムや公共工事といった要素は、現代社会においても普遍的なテーマとして、多くの示唆を与えてくれるでしょう。この作品は、単なるアニメーションとしてだけでなく、社会風刺や人間模様を描いた作品として、今もなお高い評価を受けています。

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