観音水

観音水：愛媛の秘境に湧き出る、清冽な名水

愛媛県西予市宇和町明間にある観音水は、1985年に名水百選に選定された、県内屈指の湧水です。西予市指定名勝にも指定されており、その歴史と自然の恵み豊かな水は、地域住民に長年親しまれてきました。

伝説と歴史

観音水の名称の由来は、戦国時代の天正年間（1573年～1593年）に遡ります。当地を治めていた兵頭藤右衛門の一族が、京都の清水寺に参詣した後、当地に戻り城内に観音像を安置しました。そして、清らかな水が湧き出すよう観音像に祈念したところ、霊験あらたかにも清水が湧き出したと言われています。このことから「観音水」と名付けられ、その後、湧水近くに観音堂が建立され、観音像は城から移されました。観音堂は明治時代まで存在していましたが、明治末期に火災で焼失し、再建されることはありませんでした。現在も、その歴史を偲ばせるように、清らかな水が絶え間なく湧き出ています。

水源と水質

観音水の湧出源は、歯長峠に近い杉林の斜面にある鍾乳洞です。石灰岩が溶出した弱アルカリ性の水質で、ミネラルを豊富に含んでいます。年間を通じて水温は14℃と一定しており、日量8,000トンもの水が湧き出ています。その水量は、地域住民の生活や農業を支える重要な水資源となっています。

夏の風物詩と地域イベント

夏になると、観音水の名水を汲みに、近隣住民や飲食業者など多くの人が訪れます。休日には、ポリタンクやペットボトルを持った人々が長蛇の列を作るほどの人気ぶりです。観音水の近くでは、夏期限定で「流しそうめん」を楽しむこともでき、涼を求める人々で賑わいます。また、毎年8月10日には、水への感謝を捧げる「観音祭」が開催され、地域住民の信仰と一体となった、夏の風物詩として親しまれています。

受賞歴とインフラ整備

観音水は、その水質の良さや地域への貢献が評価され、数々の賞を受賞しています。「西条市公共下水道雨水観音水幹線」は、平成3年度に手づくり郷土賞（施設部門）を受賞、平成19年度には大賞を受賞するなど、地域社会に貢献する優れた公共事業としても認められています。

アクセス

観音水へのアクセスは、JR予讃線卯之町駅から野村ダム方面へ車で約20分、または愛媛県道29号宇和野村線明間小学校対岸からとなります。豊かな自然に囲まれた場所に位置し、静寂な環境の中で、清冽な湧水を味わうことができます。周辺には、自然散策やハイキングを楽しめるスポットも多くあり、観光の拠点としても最適です。 神秘的な雰囲気と、人々の生活に密着した観音水は、愛媛の自然と歴史を感じさせる貴重な場所と言えるでしょう。

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