角屋七郎次郎

角屋七郎次郎：伊勢商人の名跡と角屋一族の歴史

角屋七郎次郎（かどや しちろうじろう）は、伊勢商人の角屋家当主が代々受け継いだ名前であり、角屋は屋号を指します。角屋家の本姓は松本氏で、寛永年間には「角谷」とも称していました。この記事では、角屋七郎次郎の歴史と、角屋一族の足跡を詳しく解説します。

角屋家の歴史

角屋家の祖先は、信濃国筑摩郡松本出身の松本氏です。永享年間に伊勢国度会郡山田に移住し、七郎次郎元秀の代に大湊へ移り、廻船問屋として「角屋」を名乗りました。元秀の子・秀持は、本能寺の変で窮地に陥った徳川家康を救い、徳川氏の御用商人となります。また、後北条氏、織田氏、北畠氏らの御用達も務める豪商でした。

2代目忠栄の時代には、蒲生氏郷による松坂城築城と城下町の楽市楽座開始に伴い、松阪を拠点として活動するようになります。3代目忠祐の時代には、弟の角屋七郎兵衛栄吉が貿易中に鎖国令により帰国できなくなり、ホイアンに永住するという出来事がありました。

1765年（明和2年）には藍玉問屋、2年後には酒問屋を開始。1769年（明和6年）には、一般の諸問屋株が禁止される中で角屋のみが除外され、藩から手厚い保護を受けました。1893年（明治26年）の松阪大火で家財を焼失しましたが、代々祀られていた徳川家康の木像は焼失を免れたと伝えられています。11代秀貞の代からは、再び山田の地へ移住しました。

歴代当主

元秀: 最初に「角屋」の号を名乗る。山田から大湊へ移住し廻船問屋を営む。父は伊勢の神官、祖父は松本郷八幡宮の神職。
初代 角屋七郎次郎 秀持: 朝熊山の柴を各地へ販売。1575年、北条氏政が徳川家康へ書状を送る際、海路で使者を送り北条氏政より虎の朱印を授かる。1582年、本能寺の変で徳川家康の伊賀越えを助ける。家康より分国中諸役免許の朱印を授かり、朱印船「八幡丸」を建造。小牧・長久手の戦いでは徳川の陣船に加わる。1600年、家康より日本全国での諸役免許特権を与えられる。長男忠栄は松阪へ、次男忠左衛門岡氏は奥州岩城へ、三男三郎左衛門松本氏は長崎へ移住。
2代目 角屋七郎次郎 忠栄: 1588年、蒲生氏郷が松坂城を築城し楽市楽座を設けた際に、大湊から松坂へ移住。町名は「湊町」と名付けられた。次男角屋七郎兵衛栄吉はホイアンに永住し、日本人町の長を務めた。三男栄信は堺で廻船業に携わる。
3代目 角屋七郎次郎 忠祐: 角屋七郎兵衛の兄。子宝に恵まれず、有久と久林を養子に迎えた。久林は松本駝堂の父。
4代目 角屋七郎次郎 有久: 忠祐の養子。
5代目 角屋七郎次郎 持忠: 松本駝堂の従兄。江戸で茶を売るも買い手がないとする書面を残している。
6代目 角屋七郎次郎 持信: 1755年に持ち船「八幡丸」が出羽国能代で難破し、船の新造資金に困難した。
7代目 角屋七郎次郎 有喜: 松本駝堂と『安南記』を共著。角屋七郎兵衛の記録をまとめたもの。
8代目 角屋七郎次郎 因信: 別名、永貞。
9代目 角屋七郎次郎 篤敬: 徳川家康の木像を公開し、浄瑠璃を上演したいと県令に申し出た記録が残る。
10代目 角屋七郎次郎 元貞: 角屋家の事跡をまとめた『角屋歴伝』を著した。
11代目 角屋七郎次郎 秀貞: 松阪を離れ、元秀の住んだ山田へ移住。

関連人物

角屋七郎兵衛栄吉: 忠祐の弟。鎖国令のためベトナムより帰国できず、ホイアンに永住。
松本駝堂: 角屋家の別家出身。忠祐の孫。医薬となる植物を探し、天然の和人参を幕府に献上。
* 悟心元明: 忠祐のひ孫。松本駝堂の次男。禅僧、画家、篆刻家。

まとめ

角屋七郎次郎は、伊勢商人の名跡として、また徳川家康を支えた豪商として、歴史に名を残しました。廻船問屋から始まり、貿易、文化活動など、多岐にわたる分野で活躍した角屋一族の足跡は、今もなお語り継がれています。

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