角屋七郎兵衛

角屋七郎兵衛栄吉：鎖国時代の異邦人

角屋七郎兵衛栄吉（かどや しちろうべえ/しちろべえ えいきち）は、慶長15年（1610年）に伊勢国松阪に生まれ、江戸時代初期に海外で活躍した貿易家です。本姓は松本、名は栄吉といいました。

生涯：安南の地で

七郎兵衛は、廻船問屋を営む角屋家の次男として生まれました。彼は朱印船貿易に携わる貿易家として、寛永8年（1631年）に安南（現在のベトナム）へと渡りました。しかし、その2年後に日本は鎖国令を出し、七郎兵衛は帰国することができなくなってしまいます。彼はその後、生涯を安南で過ごすこととなりました。

鎖国という厳しい状況下でも、七郎兵衛は故郷への想いを決して忘れませんでした。伊勢の家族や親類とは書状で連絡を取り続け、伊勢神宮や松阪城下の寺社へも寄進を続けました。また、安南中部の港町である会安（ホイアン）では、日本人街の長としてその発展に尽力しました。

七郎兵衛の死後、その功績が認められ、昭和3年（1928年）には従五位が贈られました。彼の慰霊碑は現在も三重県松阪市の来迎寺にあり、松阪市の市指定文化財として大切に保存されています。

伊勢うどんがカオラウに？

ベトナムのホイアンには、「カオラウ」という名物料理があります。これは米粉を原料とした太麺の料理なのですが、このカオラウの起源は、七郎兵衛が持ち込んだ伊勢うどんであるという説が存在します。遠い異国の地で、故郷の味が人々に愛され、独自の発展を遂げたのかもしれません。

関連作品

角屋七郎兵衛の物語 ベトナムの日本人町(1995年) - 羽田澄子、山田浩哉が演出し、中村充、日野直子が出演したドキュメンタリー映画。七郎兵衛の生涯と、ベトナムにおける日本人町の歴史を辿ります。

参考文献

徴古館農業館（編）『贈位先賢遺品目録並講演要領』徴古館農業館、1929年

角屋七郎兵衛栄吉は、鎖国という時代の波に翻弄されながらも、異国の地で生き、故郷を想い続けた人物です。彼の人生は、困難な時代を生き抜いた人々の強さと、文化交流の奥深さを教えてくれます。

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