角隈石宗

角隈石宗：大友氏を支えた知将

角隈石宗（つのくま せきそう）は、戦国時代から安土桃山時代にかけて、大友氏に仕えた武将です。単なる武人としてではなく、軍配者、軍師として、その才能を発揮しました。彼は、武田流や小笠原流といった兵法に通じ、占術や気象予測にも優れた能力を持っていたとされています。そのため、大友氏の当主である大友義鑑・義鎮（宗麟）父子から厚い信頼を受け、軍事面で重要な役割を担いました。

軍師としての活躍

石宗は、宗麟が幼少の頃から軍学の講師を務め、その指導は、戸次鎮連など後の武将にも影響を与えました。また、気象予測の知識を弟子以外にも教えていたという記録が残っています。

特筆すべきは、明智光秀との関係です。『明智軍記』には、光秀が武者修行中に石宗から軍法を学び、縄張りの名人になったと記されています。この記述の真偽は定かではありませんが、石宗の軍略家としての名声が窺える逸話と言えるでしょう。

人格者としての側面

石宗は、単に軍略に長けていただけでなく、人格者としても高く評価されていました。『フロイス日本史』には、「日本の宗派に通暁し、宗麟、義統、全ての武将から（尊敬を超える）尊崇されている」と記されています。また、日本の記録でも「道学兼備の人」と評されており、「道」とは礼儀作法や人間学、「学」とは兵法、神仏に関する知識、気象学、天文学、易学など、幅広い知識と教養を兼ね備えていたことがわかります。宣教師も石宗の言動を「道理をもって（人に）説くと道の部分が一致している」と称賛しています。

さらに、『大友興廃記』には「誠に真俗倚頼、文武の達人なり」、『歴代鎮西志』または『歴代鎮西要略』には「軍識を得た大友の師範で、性質は篤実にて、大度兼備の功臣なり」と記され、その人格の高さが伺えます。

戦での最期

石宗は、天文19年（1550年）の肥後国征伐や豊前国平定軍にも参加し、武将としても活躍しました。

天正6年（1578年）、宗麟が島津氏討伐を決めた際、石宗はこれを諌めましたが、宗麟は聞き入れませんでした。覚悟を決めた石宗は、自身の兵法書を全て焼き払い、耳川の戦いに出陣し、戦死しました。

石宗を討ったのは、薩摩の武士・本郷忠左衛門と伝えられています。本郷は、討ち取った相手が石宗だと知ると、その霊を大明神として祀ったとされています。

また、『歴代鎮西志』には、石宗を以前から知っていた島津義久が、石宗の首を見て憐れみ、廟を建てて菩提を弔ったとあります。一方、『北肥戦誌』では、義久が石宗の首を見て「この僧は私の年来の友人だった」と涙を流したとされており、石宗と島津義久との間に友情があったことが示唆されています。

逸話

石宗には、いくつかの不思議な逸話も残されています。吉野山で呪法を祈っていると、上空から脇差が落ちてきたため、呪法を祈るまでもないと谷に投げ捨てたところ、風が吹いて脇差が雲の中に消え、その後再び石宗の前に落ちてきたという話です。この脇差は宝剣として子孫に伝えられたとされています。

また、空を飛んでいたカラスを呼び寄せたり、竹に止まっているスズメを動かさずに枝を折って見せたりしたという話も伝わっています。

角隈石宗は、軍略家としてだけでなく、人格者としても多くの人々に尊敬された人物でした。その名は、歴史の中に深く刻まれ、後世に語り継がれています。

もう一度検索