言問橋

言問橋（ことといばし）

言問橋は、東京都心を流れる隅田川に架かる橋で、国道6号（言問通り）の一部として、台東区花川戸と浅草、墨田区向島を結んでいます。かつて「竹屋の渡し」という渡船場があった場所に建設されました。

建設の経緯

関東大震災からの復興事業の一環として、多くの橋が建設されました。その中で、言問橋は、復興局によって建設された隅田川六橋の一つです。当時、景観を重視し、鋼構造が路面よりも低い上路形式が採用されました。言問橋は、両岸から伸びる桁が川の中の橋脚を支え、中央の桁を支えるゲルバー橋として設計されました。この設計は岩切良助によるもので、総鋼量は2,718トン、基礎にはニューマチックケーソン工法が用いられました。1928年に竣工し、その費用は183万円を超えました。

この橋は、両国橋や大阪の天満橋と並び、三大ゲルバー橋と称されました。川端康成は小説『浅草紅団』の中で、その直線的で力強いデザインを、曲線美を持つ清洲橋と対比させ、「清洲は女だ、言問は男だ」と表現しました。

言問の由来

橋の名前「言問」は、在原業平が詠んだ歌に由来すると言われています。しかし、実際にこの歌が詠まれた場所は、現在の白鬚橋付近の「橋場の渡し」であり、言問橋近辺ではありませんでした。有力な説としては、明治時代にこの地で創業した「言問団子」が、在原業平にちなんで名付けられたことがきっかけで、この地域が「言問ケ岡」と呼ばれるようになり、それに合わせて橋の名前も「言問」となったとされています。

東京大空襲とその後

1945年の東京大空襲では、浅草方面からの避難民が、対岸へ逃れようとこの橋に殺到しました。しかし、対岸も火の海となっており、橋の上は避難民で身動きが取れない状態となり、多くの犠牲者を出しました。

戦後、橋の周辺には廃品回収業者の共同体「蟻の街」が形成されましたが、1960年頃には江東区へ移転しました。現在、橋の西詰の隅田公園には、空襲の犠牲者を追悼する慰霊碑が建立されています。また、江戸東京博物館には、橋の欄干と縁石の一部が展示されています。

言問橋は、2008年に東京都選定歴史的建造物に指定されました。また、浅草側からは東京スカイツリーの撮影スポットとしても人気があります。

橋の概要

構造形式：鋼3径間ゲルバー鈑桁橋
橋長：238.7メートル
幅員：22.0メートル
着工：1925年5月11日
竣工：1928年2月10日
施工主体：東京市復興局
橋桁製作：横河橋梁製作所

隣の橋

隅田川：（上流）- 白鬚橋 - 桜橋 - 言問橋 - 隅田川橋梁 - 吾妻橋 -（下流）

舞台・背景とした作品

音楽

言問橋（1976年）：クラフトの楽曲
言問橋（1979年）：清水由貴子の楽曲

ドラマ

夢に見た日々（1989年）：千葉真一演じる主人公が経営する喫茶店が言問橋の東岸川縁にあり、物語の重要な舞台となる。


言問橋は、その歴史、構造、そして周辺地域の文化と深く結びついており、東京の重要な文化遺産としての価値を持っています。

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