記紀の道

記紀の道：神話と歴史が息づく散策路

宮崎県西都市に位置する「記紀の道」は、全長約4キロ[[メートル]]の散策路です。この道は、『古事記』と『日本書紀』、いわゆる「記紀」に記された日向神話にゆかりのある伝承地を結び、古代日本のロマンを感じられる場所として知られています。

概要

記紀の道は、日向国総社とされた都萬神社を起点とし、瓊瓊杵尊（ニニギノミコト）と木花開耶姫（コノハナサクヤヒメ）が新婚生活を送ったとされる伝承地などを経由し、西都原古墳群の男狭穂塚・女狭穂塚（陵墓参考地）へと至ります。一部区間は歩行者専用道路として整備されており、安心して散策を楽しめます。

宮崎県内には、同じ物語の舞台とされる場所がいくつか存在しますが、記紀の道の伝承地は、江戸時代の国学者・児玉実満が1823年に完成させた『神代の絵図』にも描かれており、当時から日向神話の伝承地として認識されていたと考えられています。これらの伝承地は現在も地域住民によって大切に保存されており、その歴史的な価値を今に伝えています。

記紀の道沿いには、日向国府跡や古墳群などの史跡も密集しており、この地が古代日向の政治・経済・文化の中心地であったことを物語っています。西都市は、考古学的遺物と神話伝承が凝縮した場所であり、西都出身の考古学者・日高正晴の発案により、点在する史跡や伝承地を結ぶ道が「記紀の道」と命名されました。

付近の地名には、「妻」「児湯」「酒元」「石貫」「童子丸」など、日向神話にルーツがあると思われるものが多く残っています。伝承地の一つである「児湯の池」は、現在の児湯郡の名称の由来になったとされています。また、都萬（妻）の地を『魏志倭人伝』に記載のある「投馬国」の比定地とする説もあり、記紀以外の歴史書にもその名が登場します。

一帯は県指定の鳥獣保護区となっており、一部は九州自然歩道とも重なるなど、豊かな自然と人里が共存する風景が広がっています。毎年11月には、西都古墳まつりのたいまつ行列が記紀の道を行進し、幻想的な雰囲気に包まれます。

2018年5月24日には、西都原古墳群を中心とした周辺地域の古墳群が「古代人のモニュメント－台地に絵を描く 南国宮崎の古墳景観－」として日本遺産に認定され、記紀の道は、ストーリーを補完する構成文化財の一つとなりました。また、地域住民が主体となった伝承地を守る取り組みや風景づくりが評価され、2019年度にはグッドデザイン賞を受賞しています。

さらに、「記紀の道 ～地域の宝をつなぎ心を育む～」というテーマで、令和1年度手づくり郷土賞も受賞しています。

伝承地

記紀の道沿いには、以下の10の伝承地が連なっています。また、記紀の道を外れた場所にもいくつかの伝承地が点在しています。

記紀の道沿いの伝承地

都萬神社
御舟塚
逢初川
八尋殿跡
無戸室跡
児湯の池
石貫神社
大山衹塚
鬼の窟
男狭穂塚・女狭穂塚

その他の伝承地

三宅神社
笹貫神社
事勝塚
童子丸神社
丹裳の小野

史跡・天然記念物

記紀の道周辺には、以下のような史跡や天然記念物も存在します。

西都原古墳群（特別史跡）：西都原台地のほか、中段域にも円墳が点在しており、地下式横穴墓も発見されています。
日向国府跡（国指定史跡）
妻のクス（県指定天然記念物）
* 寺崎地区墓地のオガタマの木（市指定天然記念物）：『神代の絵図』に「御賀玉の木」として描かれている巨木です。

まとめ

記紀の道は、古代の神話と歴史が織りなす、魅力的な散策路です。神話の舞台となった伝承地を巡りながら、自然豊かな風景を楽しむことができます。西都市を訪れた際には、ぜひ記紀の道を歩き、古代日向のロマンを感じてみてください。

この道は、地域住民の熱意によって守り続けられており、その価値はますます高まっています。記紀の道は、古代からの歴史と文化を未来へと繋ぐ、かけがえのない存在と言えるでしょう。

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