許されざる者 (福岡県警)

許されざる者

概要

『許されざる者』は、2006年に福岡県警察が暴力団追放を目的として制作したドラマ仕立てのビデオ作品です。制作費30万円という低予算ながら、当時の暴力団対策課課長補佐であった藪正孝氏が、シナリオ、監督、ナレーションを担当し、撮影から編集まですべて福岡県警職員によって行われました。出演者も全員が現役の警察官であるという点が、作品に独特のリアリティを与えています。ただし、登場人物、地名、組織名などはすべて架空の設定です。

2015年4月現在、福岡県下のレンタルビデオ店約150店舗で無料貸し出しが行われているほか、インターネット上の動画配信サービスであるポリスチャンネルやYouTubeでも視聴が可能です。

ストーリー

物語の舞台は、かつて「鉄の都」と呼ばれた北九市。主人公は、暴力団「龍神会倉田組」の行動隊長であった奥村大志。3年の刑期を終えて出所した彼は、唯一の肉親である妹、真理子の元に身を寄せます。

1年後、真理子が倉田組の組員である矢野三敏の子供を妊娠していることを知った大志は、相手が堅気ではないことに失望と怒りを覚えます。しかし、妹の気持ちを尊重し、この事実を受け入れます。妹の幸せを願う大志は、矢野を組から脱退させ、堅気の仕事に就かせることが必要だと考え、行動を開始します。暴力団からの脱退は容易ではありませんが、大志はみかじめ料の支払いを拒否した建設会社社長の襲撃を条件に、矢野の脱退を組に要求します。

襲撃計画は失敗に終わり、結果として流れ弾が無辜の市民を傷つけてしまうという事態が発生します。組の対応から、大志は自分が単なる使い捨ての駒であったことを悟り、裁判での判決を受け入れ、更生を誓うのでした。

登場人物

奥村大志 - 龍神会倉田組の行動隊長。主人公。
矢野三敏 - 龍神会倉田組の組員。真理子の恋人。
奥村真理子 - 大志の妹。
倉田隆信 - 龍神会倉田組の組長。
田口揮七 - 龍神会倉田組の若頭。
宇都宮久雄 - 龍神会倉田組の本部長。
西山暁実 - 龍神会倉田組の事務局長。
秋山徹夫 - 倉田組の準構成員。
多田伸一 - 小倉東警察署の捜査係長。

制作エピソード

撮影は家庭用カメラで行われました。
組長や組員役は、それぞれの役柄に合った人相の警察官が選ばれました。
現役警察官であるため、演技に慣れるまで時間がかかりました。
襲撃シーンで使用された道路は、北九州自動車運転免許試験場です。
福岡県内外で実際に発生した暴力団関連事件を参考に、中高生にも理解しやすいように制作・編集されました。
劇中に登場する車両は、トヨタ・セルシオ（ナンバー：北九330　し・893）とメルセデス・ベンツSクラス（ナンバー：北九300　し18-93）です。

制作後のエピソード

中学校での上映が試みられましたが、一部の保護者から暴力団関係者の子供に対するいじめに繋がる可能性があるとの指摘があり、上映は中止されました。
2010年4月、福岡県暴力団排除条例の制定を機に、DVD化されました。

制作

福岡県警察
北九州地区暴力団総合対策現地本部
（財）福岡県暴力追放運動推進センター

脚注・参考文献

藪正孝『県警VS暴力団 刑事が見たヤクザの真実』文藝春秋（文春親書）、2020年。ISBN 9784166612635。
夕刊フジ 2010年5月発行分記事
日刊サイゾー 記事
（財）福岡県暴力追放運動推進センター
POLICEチャンネル 許されざる者 :ビデオライブラリー - ウェイバックマシン
YouTube

関連項目

暴力団排除条例
暴力追放運動推進センター
* 全国暴力追放運動推進センター

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