トヨタ・セルシオ

トヨタ セルシオ：高級セダンの歴史と進化

セルシオは、トヨタ自動車が1989年から2006年にかけて製造・販売した高級セダンです。この車は、トヨタが北米市場向けに立ち上げた高級ブランド「レクサス」のフラッグシップモデル「LS」の日本国内版として登場しました。

誕生の背景

当時、トヨタは伝統的な高級車として「クラウン」を擁していましたが、日米の嗜好性の違いからLSの日本導入は見送られる予定でした。しかし、バブル景気下で日産・シーマが人気を博すなど、国内の高級車市場が拡大していたため、クラウンでは満足できない顧客層に応えるべく、クラウンとセンチュリーの中間に位置する車種としてセルシオが導入されました。

セルシオの登場は「新しいトヨタ」を象徴する出来事であり、その広告戦略も大々的なものでした。また、セルシオの登場を機に、現在のトヨタCIマークの使用が開始されました。ショーファードリブンが前提のセンチュリーを除けば、当時の日本車で最高級車に位置付けられました。

車両の概要

セルシオは、その高い品質基準が製造現場にも影響を与えました。フラッグシップモデルであるため、部品の精度が厳しく求められ、その結果、トヨタ全体の品質向上に繋がったと言われています。

2005年には日本国内でもレクサスブランドが展開され、2006年にはセルシオの後継車種として新型LSが発売されました。これに伴い、セルシオの名称は消滅し、レクサス店での取り扱いに完全移行しました。

型式名

セルシオは、UZエンジンを搭載し、車両型式名がXFであることから、トヨタの型式ではUCFから始まる型式が用いられました。具体的にはUCF10/11、UCF20/21、UCF30/31が存在し、末尾が0のものはコイルサスペンション、1のものはエアサスペンションを装備していました。

各世代モデルの詳細

初代 XF10型（1989年 - 1994年）

1989年10月9日に販売が開始された初代セルシオは、トヨタCIマークを最初に装着したモデルです。新開発の4.0L V8エンジン（1UZ-FE）を搭載し、クラウンやハイメディックにも採用されました。グレードはA、B、Cの3種類があり、C仕様が最上級グレードでした。

サスペンションは、前後ダブルウィッシュボーン式で、A、B仕様はコイルサスペンション、C仕様は電子制御エアサスペンションを採用。B仕様には世界初のピエゾTEMSが搭載されました。C仕様には、後席の快適性を高めた「Fパッケージ」も用意され、ショーファードリブンとしての利用も考慮されました。

初代セルシオは、日本車初の自発光式メーターを採用。また、メーカーオプションとして、自動車メーカー純正品としては初となるDATデッキが用意されました。

1992年にはマイナーチェンジが行われ、16インチホイール、助手席エアバッグ、GPSカーナビゲーション対応のエレクトロマルチビジョンなどが追加されました。

1994年9月に生産終了し、後継の2代目モデルにバトンタッチしました。

2代目 XF20型（1994年 - 2000年）

1994年10月に登場した2代目セルシオは、初代のキープコンセプトながら、プラットフォームの改良により、居住性と運動性能が向上しました。エンジンは引き続き4.0L V8エンジン（1UZ-FE）を搭載しましたが、出力向上と軽量化が図られました。グレード構成はA、B、C仕様を踏襲しました。

1996年には、衝突安全ボディー「GOA」の採用やサイドエアバッグの標準装備など、安全性が向上。A、B仕様にはユーロチューンド・サスペンションを採用した「eRバージョン」が追加されました。

1997年にはマイナーチェンジを行い、ヘッドライトはディスチャージランプに変更、エンジンはVVT-iが採用され、出力が向上、ATは5速化されました。安全装備も充実し、VSC、ブレーキアシスト、プリテンショナー付きシートベルトなどが搭載されました。また、エンジンイモビライザーも標準装備されました。

1999年には、発売10周年を記念した特別仕様車「10thアニバーサリー」が登場しました。

2000年7月に生産終了し、後継の3代目モデルにバトンタッチしました。

3代目 XF30型（2000年 - 2006年）

2000年8月31日に登場した3代目セルシオは、4.3L V8エンジン（3UZ-FE）を搭載。外観デザインが大きく変わり、曲面を多用した優雅なスタイルとなりました。ドアパネルもサッシタイプに変更され、リアドアウインドウは2分割式となりました。また、全ドアにイージークローザーが装備され、スマートキーシステムが選択可能となりました。

環境性能にも配慮し、排出ガスを大幅に低減、空力性能も向上しました。内装は高級ホテルの客室や航空機のファーストクラスシートを参考にデザインされました。グレード構成はA、B、C仕様で、それぞれに「eRバージョン」や「Fパッケージ」、「インテリアセレクション」などのパッケージオプションが設定されました。カーオーディオには、「マークレビンソン」のプレミアムサウンドシステムがオプション設定されました。

2003年にマイナーチェンジを行い、ヘッドランプ、ボンネット、フェンダー、トランクリッドなどが新デザインとなり、全長が5mを超えました。ATは6速化され、燃費が向上しました。グレード構成も見直され、B仕様や「eRバージョン」は廃止され、新たに「eR仕様」が追加されました。また、プリクラッシュセーフティシステムなどの先進安全装備も搭載されました。

2005年に日本国内でもレクサスブランドが展開されることになり、セルシオは2006年5月に販売終了。後継モデルはレクサス・LSとして販売されることとなりました。

車名の由来

セルシオ(CELSIOR)という名前は、ラテン語で「至上、最高」を意味するcelsusの比較級celsiorの英語読みです。この名前には、トヨタがこの車に込めた「最高級」という思いが込められています。

まとめ

セルシオは、3世代にわたり、日本の高級車市場を牽引しました。その高い品質、先進的な技術、そして洗練されたデザインは、多くの人々を魅了し、現在でもその名が語り継がれています。

参考情報

エンジン
1UZ-FE V8 DOHC 32バルブ NA 3968 cc
3UZ-FE V8 DOHC 32バルブ NA 4292 cc
関連項目
トヨタ自動車
レクサス・LS
トヨタ・UZエンジン
VIPカー
トヨタ・センチュリー
トヨタ・クラウン
トヨタ・クラウンマジェスタ
トヨタ・ウィンダム
トヨタ・プログレ
トヨタ・アリスト
トヨタ・アルテッツァ
日産・プレジデント
日産・シーマ
スリルドライブ - 初代『スリルドライブ』ではXF20型の前期、『スリルドライブ２』ではXF20型の後期、『スリルドライブ３』ではXF30型の前期を模した車が登場し、それを選択かつ自車として操作できた。
外部リンク
GAZOO.com トヨタ セルシオ（初代）
GAZOO.com トヨタ セルシオ（2代目）
GAZOO.com トヨタ セルシオ（3代目）

もう一度検索