許和平

許和平：波乱に満ちた生涯と第五共和国

許和平（ホ・ファピョン）は、大韓民国の歴史に大きな足跡を残した政治家であり、陸軍軍人です。1937年10月15日、慶尚北道浦項府に生まれ、浦項高等学校を経て陸軍士官学校を卒業しました。軍人としてのキャリアは順調で、歩兵第9師団大隊長や作戦参謀、国軍保安司令官秘書室長などを歴任。ハナフェにも参加するなど、軍内部での影響力を強めていきました。

粛軍クーデターへの関与と全斗煥政権

1979年の粛軍クーデター当時、許和平は保安司令官秘書室長という要職にあり、クーデターの画策に深く関与したとされています。全斗煥政権下では、大統領秘書室補佐官や大統領政務第1首席秘書官といった要職を歴任し、「5共の設計者」と呼ばれるほど大きな影響力を持つようになりました。許文道、許三守と共に「スリー許」と呼ばれ、政権の中枢を担いました。しかし、1982年の「張玲子・李哲熙金融詐欺事件」において、全斗煥の親族の公職辞退を提案したことで、全斗煥との関係は冷え込み、大統領府を去ることになります。

アメリカでの研究活動と政界復帰

大統領府を去った後は、アメリカ合衆国へ渡り、ヘリテージ財団傘下のヘリテージ研究所で上級研究員を務めました。盧泰愚政権が発足すると帰国し、1992年の第14代総選挙に無所属候補として立候補、浦項市選挙区から当選を果たします。その後、金泳三を支持し民主自由党に入党しましたが、金泳三政権による粛軍クーデター関連者に対する司法処理の対象となり拘束されました。

獄中からの再選と議員職喪失

1996年の第15代総選挙では獄中から無所属で立候補し、再選を果たすという驚異的な結果を残しました。しかし、粛軍クーデターや光州事件への関与を問われ、懲役8年の有罪判決を受け、議員職を失うことになります。1997年12月に刑の執行が免除されましたが、その後は政界復帰を果たせず、政界を引退しました。

政界引退後の活動と全斗煥への弔問

政界引退後は、現代社会研究所所長や未来韓国財団所長などを務めました。2021年には、全斗煥の死去に際し、遺体安置所へ弔問に訪れるなど、全斗煥との深い繋がりを示す行動も取っています。

朴正煕暗殺事件と崔太敏

さらに、許和平は朴正煕暗殺事件後、崔太敏を江原道に隔離し、崔の横領・詐欺疑惑を調査した人物としても知られています。このエピソードからも、彼の政治的立場と複雑な歴史的役割がうかがえます。

第五共和国と光州事件に関する主張

許和平は、第五共和国を時代の産物と捉え、朴正煕の死後、金泳三や金大中が新軍部を圧迫したことに対する反撃として成立したと主張しています。また、全斗煥と第五共和国を最も清廉で模範的と評価し、光州事件については光州市民側が和解の手を差し出すべきだと主張するなど、極めて保守的な立場をとっています。崔順実ゲート事件後には、朴槿恵が「セマウム奉仕団」の再建を軍部に要請した事実を明らかにし、朴槿恵を「崔太敏の精神的捕虜」と表現するなど、強い発言も残しています。

家族に関する記述

弟は、日本と北朝鮮への渡航歴があり、北朝鮮工作員として活動した過去を持つ人物です。1969年に無期懲役を宣告されましたが、1982年の特赦によって出獄しています。

結論

許和平の生涯は、韓国現代史における激動の時代を反映した、非常に複雑で多面的なものです。軍人として、政治家として、そして個人の人間として、彼の経験と行動は、韓国の政治と社会に多大な影響を与え続けました。彼の主張や評価は議論の余地がありますが、彼の存在は、韓国現代史を理解する上で不可欠な要素であることは間違いありません。

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