許波多神社

許波多神社について

許波多神社（こはたじんじゃ）は、京都府宇治市に存在する重要な神社です。この神社は、式内社（名神大社）として位置づけられ、宇治市内には同名の神社が木幡と五ケ庄という隣接する地域に存在しています。両方の神社は、異なる社伝を有し、共に旧社格としては郷社に分類されています。以前は「柳大明神」とも称され、神社の由緒ある名称を持っています。

延喜式神名帳では、名神大社として登載されている許波多神社は、大海人皇子（後の天武天皇）や坂上田村麻呂など著名な人物が戦勝を祈願した場所とされており、勝運をもたらす神社として知られています。どちらの神社においても、祭神として天忍穂耳命が祀られており、この祭神を含む式内社は許波多神社だけです。この重要な位置づけにより、鎌倉時代の文献『釈日本紀』には、許波多神社の神は特に尊崇されるべき存在であると記されています。

また、永禄12年（1569年）には最高位である正一位の神階を得ており、戦後は両社とも神社本庁に加盟せず、神社本教に属しています。戦国時代には戦火によって社殿のほとんどが焼失し、古文書や伝承も消失してしまいました。

五ヶ庄の許波多神社

五ヶ庄に位置する許波多神社では、天忍穂耳命のほか、瓊々杵尊や神日本磐余彦尊（神武天皇）も祀られています。社伝によると、大化元年（645年）に蘇我倉山田石川麻呂の奏上を受け、孝徳天皇が中臣鎌足に社殿を建造させるよう命じたのが始まりです。このため、柳山に社殿が設けられ、その後「柳大明神」と呼ばれるようになりました。江戸時代までは「柳神社」という名称が使われていましたが、明治時代には宇治火薬製造所の建設によって社地が官有地として差し押さえられ、現在の場所に遷座しました。遷座の際、社名も旧称である許波多神社に改名されました。

本殿には鎌倉時代に作られた天忍穂耳命の神像が祀られており、平安時代後期に制作された男女の神像（馬頭天王と弁財天）も伝わります。かつては社殿から続く東西の馬場道で競馬の神事が行われ、「競馬発祥の神社」としての名声を誇ります。社宝には平安時代の鐙が重要文化財に指定され、競馬ファンや関係者の信仰の対象となっています。

遷座前の許波多神社

遷座前の許波多神社は、創建の地である柳山（現在の宇治市黄檗公園付近）に存在しました。当時の参道は、黄檗公園から西に延び、JRや京阪の踏切を越えた地点に一ノ鳥居があったと言われています。しかし、明治時代の遷座に伴い、鳥居の上部が取り除かれ、現在は下部の沓石だけが残されています。この石は「京大のモアイ」とも呼ばれ、往時の許波多神社の面影を残す貴重な遺構として親しまれています。黄檗公園の体育館前には、本殿の基壇が復元され、柳の木が植えられています。

文化財

許波多神社には重要文化財の本殿（三間社流造、室町時代）や平安時代に制作された鐙の一双、鎌倉時代の鐙も附属文化財として存在します。また、府指定の有形文化財として男女神像（馬頭天王・弁才天、平安時代）があります。

木幡の許波多神社

木幡にある許波多神社の社伝では、大化元年（645年）に皇極天皇が夢のお告げを受け、社殿を造営したと伝えられています。この神社では、大海人皇子が戦勝祈願を行ったエピソードがあり、柳の枝の芽が出た際に「柳大明神」と名付けられる由来もあります。18541年（1908年）には田中神社と合祀し、祭神も増えています。

境内には狐狸塚と呼ばれる墓地があり、藤原基経の墓とも言われています。境内社には市杵島神社、稲荷神社、愛宕神社、八幡宮社、天照皇大神宮、春日神社などが点在しています。

このように、許波多神社はその歴史や文化、信仰が今もなお息づいており、訪れる人々にとって貴重な存在となっています。

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