許筠

許筠（きょいん、ホ・ギュン）

許筠は1569年に生まれ、1618年に亡くなった李氏朝鮮時代の文人、政治家、思想家、そして小説家です。彼の本貫は陽川許氏で、字は端甫、号は蛟山、惺所、白月居士と多岐に渡ります。最古のハングル小説『洪吉童伝』の作者として名を馳せ、彼の作品は朝鮮文学に大きな影響を与えました。

一族の背景

陽川許氏は、高麗時代の開国の功労者である許宣文の子孫にあたります。高麗末期には、多くの有力な人材を輩出しており、文人としての伝統が色濃く残っています。例えば、同時代に活躍した医学者の許浚もこの家系の出身です。彼の父・許曄は29歳で科挙に合格し、副提学として王の側近を努め、その人望は高かったものの、讒言により一時失脚しましたが、その後復職し、晩年は慶尚北道で亡くなりました。

許筬と許篈、両名の兄たちはいずれも当時の大臣クラスの官僚として活躍し、特に許筬は日本に来た経験もあります。また、許の姉・許蘭雪軒はわずか9歳で詩作を始めた天才であり、儒教が重んじられていた時代にあって女性詩人としての道を切り開いていきました。

生涯と官僚としての活動

許筠は父の三男として生まれ、1594年には25歳という若さで科挙の状元となり、官吏としての道をスタートしました。彼は春秋館の記注官などを経て、政治に深く関与するようになりました。しかし、早くに父を亡くし、母の元で慈しみを受けて育ったため、傲慢さや軽率な言動が目立ったとのことです。この性格が影響してか、彼は6回の罷免と復職を繰り返し、その大半は思想に関する問題によるものでした。

許筠は、時代の朱子学に飽き足らず、陽明学の「知行合一」の思想に心を寄せていました。彼は詩作の師である李達から大きな影響を受け、庶子に対する差別を批判しました。さらに彼は西学への興味を持ち、明の使臣としての任務中に洗礼を受け、朝鮮で初のキリスト教徒となったとされています。

政治と弾圧

光海君の信任を得て政治に深く関与したが、党争に巻き込まれました。彼の腹心が関与した事件により、有名な『朝鮮王朝実録』に185回も名が記されることとなります。最終的には無名の儒者からの讒言を受け、叛乱の首謀者として捉えられました。光海君への誹謗が行われた際、許筠もその影響を受け、彼はわずか3日で凌遅刑に処せられました。彼の死は当時の社会の恐怖政治を物語っており、光海君の圧政は多くの有能な人材を失わせる結果を招きました。

新たな思想と著作

許筠は朝鮮社会の身分制度に疑問を抱き、万民平等を実現する社会を主張しました。彼は「惺所覆瓿稿」の中で才能に関する見解を述べ、身分や性別に関わらず全ての人に公平に才能が与えられると主張しました。また、彼は「豪民論」で民の意志が社会の動力であると強調しています。

彼の思想は時代が経てもなお、その影響力を持ち続けており、様々な歴史的事件や運動に影響を及ぼし続けました。

記録・文化的影響

許筠の著作には、小説『洪吉童伝』や詩歌評論集『蛟山詩話』、随筆『識小録』、『燗情録』、詩文集『惺所覆瓿稿』などがあります。また彼に登場する作品も多く、映画『王になった男』やドラマ『ホ・ギュン 朝鮮王朝を揺るがした男』などの形式で彼の影響が映し出されています。

まとめ

許筠は李氏朝鮮時代における最も重要な知識人の一人であり、彼の思想は現代においても多くの人々に受け入れられています。彼の生涯を通じて様々な挑戦を経て得た知見は、今なお私たちに貴重な教訓を提供しています。

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