許黄玉

許黄玉（ホ・ファンオク）とは

許黄玉（ホ・ファンオク、32年 - 189年）は、古代国家・金官伽耶（きんかんかや）の初代王である首露王（しゅろおう）の妃であり、第二代王の居登王（きょとうおう）の母です。彼女は、遠い異国である阿踰陀（あゆだ）国からやってきたと伝えられ、その出自は謎に包まれています。

伝説と物語

『三国遺事』に収録された『駕洛国記』には、彼女に関する興味深い物語が記されています。阿踰陀国の王女であった許黄玉は、夢のお告げを受けた両親の勧めで、海を渡り伽耶へと向かいます。その際、彼女は蒸したナツメと蟠桃（ばんとう）という不老不死の桃を携えていたとされています。蟠桃は神仙思想に登場する特別な桃であり、彼女が単なる王女ではなく、神秘的な力を持った存在であったことを示唆しています。

阿踰陀国とは

許黄玉の出身地である阿踰陀国については、インドのアヨーディヤーが最有力とされています。その根拠の一つとして、首露王陵の正門に刻まれた双魚文様が、アヨーディヤーの建築様式の特徴と一致することが挙げられます。この事実は、古代インドと朝鮮半島との間に、文化的な交流があったことを示唆しています。また、阿踰陀国がインド以外にもタイ、中国、日本などとする説も存在します。

歴史的考察と科学的検証

朝鮮の歴史書には、許黄玉以外にも阿踰陀国出身の人物が登場します。また、林泰輔は著書『朝鮮史』において、許黄玉がインド人であり、インドから朝鮮半島南部に渡来したとする説を提唱しました。その論拠として、仏典に散見される同様の事例や、卵生神話の類似性などを挙げています。

さらに、2004年には、許黄玉の「インド渡来説」を裏付ける科学的な証拠が発見されました。ソウル大学と翰林大学の研究チームが、許黄玉の子孫と推定される古墳の遺骨を分析した結果、そのDNAが韓民族のルーツであるモンゴル北方系ではなく、インド南方系の特徴を持つことが明らかになったのです。この発見は、許黄玉がインドから来たという伝説を、科学的に裏付けるものとなりました。

現代への影響

許黄玉は、現代でも多くの人々に知られ、親しまれています。金海市には彼女の墓があり、彼女がインドから持ち込んだとされる婆娑石塔（ばさせきとう）も残されています。また、釜山広域市には、彼女をモチーフにした人魚のブロンズ像が設置されています。さらに、釜山と金海では、彼女の足跡をたどる「許王后婚行ロード」の観光商品化が進められており、将来的にはユネスコ世界文化遺産登録を目指しています。

子孫と家族

許黄玉は、首露王との間に10人の息子をもうけました。そのうち2人に許姓を与え、これが金海許氏の起源となったとされています。彼女の家族構成は以下の通りです。

夫：首露王
子：居登王
* 孫：麻品王

結論

許黄玉は、古代のロマンと謎を秘めた人物であり、その存在は、歴史と伝説が交錯する魅力的な物語を語り続けています。彼女の物語は、古代の文化交流や人々の移動、そして人々の想像力を掻き立てる要素を今に伝えています。

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