試作近距離偵察機

試作近距離偵察機（2MR7）

試作近距離偵察機「2MR7」は、三菱航空機が大日本帝国陸軍のために開発した偵察機です。三菱社内では機体番号「2MR7」と呼ばれ、主に1930年（昭和5年）に着手されました。この試作機の設計には、服部譲次技師が中心となり、陸軍向けの近距離偵察機の開発に関与しました。

当初、三菱は自己主導で近距離偵察機を開発する計画を立て、「2MR7」の設計プロジェクトに取り組みました。さらに、フランスから招聘したベルニス技師によって設計された高翼単葉機「2MR8」も並行して試作され、陸軍に提出されました。陸軍は両機を比較し、最終的には「2MR8」の開発を継続するよう三菱に指示しました。一方で、「2MR7」の開発は中止される結果となりました。

「2MR8」は後に九二式偵察機として陸軍に正式に採用され、歴史的な役割を果たしました。試作機の「2MR7」は、実際には1機のみが製作され、その運用は主に三菱の社用機として行われました。また、一時的に乙式一型偵察機の後継機候補として検討されましたが、最終的な採用には至りませんでした。

機体の設計は、一〇式艦上偵察機や八九式艦上攻撃機といった他の軍用機の系列に連なるもので、木材と金属を混合した骨組みに羽布張りの複葉機という特徴を持っていました。この構造は軽量であり、比較的小型ながら堅牢な設計がなされていました。

「2MR7」の乗員は2名で、降着装置は固定脚を備えていました。動力源は三菱製のイスパノ・スイザ水冷V型8気筒エンジンで、最大出力は320馬力に達しました。また、武装については7.7mmの固定機銃と同旋回機銃をそれぞれ1挺ずつ装備していました。この武器構成は、偵察任務において最低限の火力を確保するためのものでした。

試作近距離偵察機の「2MR7」は、三菱が陸軍向けに開発した多くの航空機の中でも特異な存在であり、その試作の背景や結果は、当時の航空技術の進歩や戦略的な必要性を反映しています。

参考文献

• - 野沢正 『日本航空機総集 三菱篇』 出版協同社、1961年
• - 松岡久光『みつびし飛行機物語』アテネ書房、1993年

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