読売アンデパンダン展

読売アンデパンダン展：自由と混沌の15年間

1949年から1963年まで、東京都[[美術館]]で開催された「読売アンデパンダン展」。無審査、自由出品という画期的なスタイルで、多くの前衛的な若手作家を輩出した展覧会として知られています。読売新聞社主催という強力なバックアップを受け、当初は国内外の著名な作家による作品展示が中心でしたが、次第に若手作家たちの革新的な、そして時に過激な表現が台頭していくことになります。

展覧会の始まりと初期の展開

読売新聞の海藤日出男と瀧口修造の企画によりスタートした本展は、当初は市民に芸術を紹介する場としての側面も持ち合わせていました。そのため、有名作家の作品と一般市民による素朴な作品が並ぶという、独特の雰囲気も漂っていました。しかし、1950年代後半から状況は変化し始めます。

若手作家たちの台頭と反[[芸術]]ブーム

1958年頃より、初期の若手作家よりもさらに若い世代の作家たちが、従来の芸術観念を覆すような作品を発表するようになります。「焼いた竹」や「小便をかけたゴミ」といった、常識を逸脱した作品は、大きな話題を呼び、同時に、一般市民や主催者との間で様々なトラブルを引き起こすことになります。

これらの作品は、既存の美術界に対する反発、そして、社会に対する挑発的なメッセージとも捉えることが出来ました。この頃のアンデパンダン展は、単なる作品展示の場ではなく、社会や芸術に対する激しい議論の舞台となっていました。1960年には、若手作家たちによって「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」が結成され、そのマニフェストでは「殺戮者」を自認するほどの過激な姿勢が示されました。評論家の東野芳明が工藤哲巳の作品を「反[[芸術]]」と評したことも、この時代の反[[芸術]]ブームを加速させる要因となりました。

エスカレートする状況と展覧会の中止

若手作家たちの過激な表現は、次第にエスカレートしていきます。「女性器の接写」「腐敗するうどん」といった作品は、主催者である読売新聞社や東京都[[美術館]]との摩擦を生み出します。東京都[[美術館]]は1962年、「陳列作品規格基準要項」を制定し、悪臭や危害の恐れのある作品、公衆衛生法規に触れる作品などの出品を拒否するようになりました。この規定は、当時のアンデパンダン展の混沌とした状況を如実に物語っています。

1963年の展覧会でも問題となる作品は続き、ついに1964年、第16回展直前に開催中止が決定されました。これは、大手メディアによる芸術振興の限界を示す出来事でもありました。

影響とその後

アンデパンダン展で注目を集めた作家の中には、後に著名な芸術家となった者も多くいます。赤瀬川原平は、展覧会への出展がきっかけで逮捕されるという経験もしています。本展は、日本の現代美術に大きな影響を与え、特に反[[芸術]]運動の隆盛に大きく貢献しました。展覧会終了後も、「アンデパンダン'64」や「長良川アンデパンダン」など、各地で同様の展覧会が開催され、アンデパンダン展の精神は受け継がれていきました。

代表的な出展作品と作家

池田龍雄『網元』 (1954年): 内灘闘争をテーマにした作品で、安部公房の激賞を受け、池田龍雄の名を画壇に知らしめました。
篠原有司男『地上最大の自画像』(1958年): ボクシング・ペインティングによる作品で、瀧口修造から「青春」と評されました。
工藤哲巳『X型基本体に於ける増殖性連鎖反応』(1960年): 東野芳明から「ガラクタの反[[芸術]]」と評された、極めて挑戦的な作品です。
工藤哲巳『インポ哲学―インポ分布図とその飽和部分に於ける保護ドームの発生』(1962年): 東京都[[美術館]]の部屋を借り切って、男根を模したオブジェや腐敗するうどんを設置した、過激なインスタレーション作品です。
* 赤瀬川原平『復讐の形態学（殺す前に相手をよく見る）』(1963年): 千円札の精密模写作品で、赤瀬川原平は通貨模造の罪で起訴されました。

読売アンデパンダン展は、自由と混沌、そして、芸術と社会の摩擦が渦巻く、まさに時代の縮図と言える展覧会でした。その歴史は、日本の現代美術史において、重要な一頁を刻んでいます。

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