諸井六郎

諸井 六郎について

諸井六郎（もろい ろくろう、1872年2月17日 - 1940年5月）は、埼玉県本庄市に生まれた明治から昭和にかけての著名な外交官であり、郷土史家としても知られています。彼は従三位勲二等を受章し、特に条約改正に関連した国際問題に取り組んだことで評価されています。彼の兄、諸井恒平は秩父セメント会社の創設者でもあり、六郎の家系は商業においても成功を収めていました。

生い立ち

本庄宿、現在の本庄市で誕生した六郎は、郵便取扱人であった父・諸井泉衛の元で育ちました。泉衛は東諸井家の当主であり、彼の妻である佐久は著名な実業家・渋沢栄一の親戚でした。この家庭環境が、六郎に多大な影響を与えました。

若いころの六郎は、浅野セメント深川工場に下宿しながら苦学しましたが、教育方針に不満を抱き、逃げ出そうとした経緯があります。初の学生生活を経て、1888年には第一高等中学校に進学。1893年には同校を卒業しました。

外交官としての道

1896年、東京帝国大学法科大学を卒業後、外交官および領事官の両試験に合格しました。そこで彼の外交官としてのキャリアが始まりました。中国、イギリス、ベルギー、ドイツ、アメリカ、イタリアなど、多岐にわたる国々で外交書記官や公使を歴任し、国際交流に努力しました。

特に小村寿太郎外相の下で、条約改正に取り組んだことが大きな業績です。1924年のジュネーヴにおけるILO総会では使用者代表顧問を務め、国際的な問題にも深く関与しました。

条約改正活動

帰国後の六郎は、国際経済問題の研究を続け、特に陸奥条約の改正に重きをおきました。当初、条約改正の方針に関しては戸惑いがあったものの、彼はドイツ語、英語、フランス語の文献を用いて、改正調査の基盤を作りました。関係各省の同意も得た上で、条約改正準備委員会の幹事として尽力し、根本方針を決定しました。彼の努力は1912年まで続き、その子供たちにも条約にちなむ名前を付けるほど、彼の情熱が反映されていました。

郷土史への貢献

六郎はまた、古文書や地方の歴史に深い興味を持つ郷土史家でもあり、学生時代から本庄の歴史をまとめる活動を行っていました。公務のために一時中断したものの、条約改正の合間を縫って執筆を再開し、1912年には『徳川時代之武蔵本庄』を発表しました。この著作は地域経済の観点から歴史を分析しており、地方史研究において貴重な資料とされています。

評価と遺志

六郎は、外交官として多くの実績を残す一方で、郷土史への情熱をもって地域の歴史を明らかにしようと努力しました。彼の条約改正に関する貢献は、後世の政治家からも高く評価され、特に国際関係の進展に寄与した重要な影響力を持つ人物とされています。

1940年、69歳でこの世を去った六郎ですが、その足跡は今でも人々の記憶に残っています。彼の働きは、外交の場だけでなく、地方の歴史を守り、継承するための素晴らしい教訓を残しました。

もう一度検索