諸井虔

諸井虔：実業家としての功績と論客としての顔

諸井虔（もろい けん、1928年4月23日-2006年12月29日）は、日本の実業家として、そして財界を代表する論客として、その名を広く知らしめた人物です。埼玉県本庄市に生まれ、名家である諸井家の血筋を引く彼は、秩父セメントの経営に深く関わり、数々の企業や公益団体の要職を歴任しました。その生涯は、日本の経済発展と社会変革の重要な局面と密接に結びついています。

彼のルーツは、江戸時代から続く名主の家系に遡ります。秩父セメントの創業者一族である諸井家、その本家筋に生まれたわけではなかったものの、作曲家であった父・諸井三郎氏の経済的自立への苦労を目の当たりにした経験と、本家に男子がいなかったという事情から、伯父である諸井貫一の要請により、秩父セメントの経営を引き継ぐこととなりました。

東京大学経済学部卒業後、日本興業銀行に入行。銀行員としての経験を経て、1967年に秩父セメントに入社、以後、取締役、代表[[取締役]]社長、代表[[取締役]]会長と要職を歴任しました。その間、規制緩和を積極的に推進するなど、時代の変革を先導する役割を果たしました。牛尾治朗氏と共に、財界きっての論客として知られ、その発言は常に注目を集めました。リクルート事件では、未公開株譲渡を受けていたことも知られています。

彼の活動は、セメント業界にとどまりませんでした。日本経営者団体連盟副会長、地方分権推進委員会委員長、税制調査会委員、地方制度調査会会長などを歴任し、日本の経済政策や行政改革に大きな影響を与えました。また、太平洋セメント株式会社の取締役相談役、日本航空株式会社の取締役など、多様な企業の経営にも関与しました。

特に、西武グループ経営改革委員会委員長として手腕を発揮したことは記憶に新しいでしょう。西武ライオンズ球団の売却問題では、反対の立場を貫き、球団存続に尽力しました。このエピソードは、彼の強い信念と決断力を象徴する出来事と言えるでしょう。

音楽への造詣も深く、父や弟が職業音楽家であったように、自身もアマチュア合唱団の指揮者として活躍しました。東京大学在学中や日本興業銀行在職中も、音楽活動に熱意を燃やしていたといいます。

諸井虔の生涯は、名家の出身、財界の重鎮、そして鋭い論客という複数の側面を併せ持ち、激動の時代を生き抜いた稀有な人物像を示しています。その功績は、日本の経済史、そして社会史に刻まれたと言えるでしょう。彼の生き様は、後世のリーダーたちに多大な影響を与え続けることでしょう。

年譜

1928年4月：埼玉県本庄市に生まれる
1953年3月：東京大学経済学部卒業
1953年4月：日本興業銀行入行
1967年3月：秩父セメント株式会社入社
1969年1月：秩父セメント株式会社取締役就任
1976年8月：秩父セメント株式会社代表[[取締役]]社長就任
1986年8月：秩父セメント株式会社代表[[取締役]]会長就任
1993年5月：日本経営者団体連盟副会長就任
1994年10月：秩父小野田株式会社代表[[取締役]]会長就任
1995年6月：株式会社東京放送取締役就任
1995年7月：地方分権推進委員会委員長就任
1998年10月：太平洋セメント株式会社取締役相談役就任
1999年6月：日本航空株式会社取締役就任
2000年6月：太平洋セメント株式会社相談役就任
2000年9月：税制調査会委員就任
2001年11月：地方制度調査会会長就任
2004年：西武グループ経営改革委員会委員長就任
2006年12月29日：死去（78歳）

家族・親族

祖父：諸井恒平（実業家、秩父セメント創業者）
父：諸井三郎（作曲家）
弟：諸井誠（作曲家）
伯父：諸井貫一（実業家、元秩父セメント会長）

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