謙虚な請願と勧告

謙虚な請願と勧告について

謙虚な請願と勧告（けんきょなせいがんとかんこく）は1667年5月にイングランド共和国で制定された法律です。この法律はイギリスにおける初の成文憲法である統治章典に続くもので、王政への回帰と諸制度の復活を目指し、統治章典の改訂を含む内容が特徴でした。

制定背景

清教徒革命の時代、護国卿オリバー・クロムウェルが政権を掌握していましたが、彼の政権は第一議会の批判によって早くも動揺し始めました。1655年の議会解散によって統治章典は正式に批准されず、政権の不安定さが露呈しました。さらに、1656年9月に召集された第二議会でも、反政府の動きが強まったため、政局はますます混迷を深めました。

その後、1657年1月にクロムウェルへの暗殺未遂事件が発生し、この事件が転機となりました。彼の安全を懸念するロンドンの商人クリストファー・パックらが、クロムウェルを国王に即位させる提案をしました。この提案には彼の派閥の一部も加わっており、王政復帰の議論がなされました。3月までに新しい憲法の制定とクロムウェルの王位奉呈が可決されましたが、クロムウェルやその側近は王位就任を拒否しました。

新憲法の成立

王位を辞退したクロムウェルは、新憲法の制定には承諾し、1657年5月25日に「謙虚な請願と勧告」と名付けられる憲法が成立しました。この憲法の特徴は、従来廃止された王政の機関が復活した点にあります。議会は一院制から二院制への転換が行われ、護国卿の指名による70名からなる第二院が設立されました。これにより、政治機関の構成が強化されたのです。国務会議は枢密院に改名され、権限は制限されました。

さらに、統治章典で問題となった議会の権限は強化され、下院議員は下院の同意なしに追放されることがなくなりました。また、議会は3年に1回護国卿によって召集されることが決定されるなど、立法権や課税権の施行には議会の同意が必要とされる規定が設けられました。これにより、議会でのコモン・ローの権利が確認され、護国卿の権限も強化されました。

社会の影響

クロムウェルは、この新体制において王にはならないものの、王に準ずるほどの権力を持つ政治家となりました。これにより、彼は合法的にその正統性を確保し、議会主義的な制度へと移行しました。代わりに権力の均衡が強調される社会が形成されました。しかし、この構造は継続することはありませんでした。

1658年に議会が再開されると、共和主義者が出入りしたため、政治的混乱が生じました。彼の議会解散もあり、最終的に同年9月にクロムウェルが亡くなったことが共和国の終焉を決定づけました。最終的に共和国の伝統は消えることはなく、1660年に王政復古の形で再び現れることとなりました。この流れは新しい社会の基盤を築く一因となりました。

参考文献

• - 今井宏『クロムウェルとピューリタン革命』清水書院
• - 田村秀夫編『クロムウェルとイギリス革命』聖学院大学出版会
• - 松村赳・富田虎男編『英米史辞典』研究社

これらの資料を通じて、謙虚な請願と勧告が如何にして政治の転換点となり、またイギリスの歴史にどう影響を与えたのかを学ぶことができるでしょう。

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