謝晦

謝晦（しゃ かい）は、東晋の太保・謝安の血を引く名門、陳郡謝氏の出身です。東晋末期、新興勢力として台頭してきた劉裕に早くから目をつけられ、その配下として軍事・政治の両面で活動しました。劉裕が皇帝として即位（南朝宋の武帝）すると、謝晦は領軍将軍という要職に就き、宮廷内の警備を統括するなど、武帝の側近として権勢を振るいました。

武帝の死後、幼い少帝が即位すると、謝晦は徐羨之らと共に後見役を担い、政治の実権を掌握します。しかし、少帝の治世は長くは続きませんでした。謝晦らは少帝を廃位し、殺害するという強硬手段に出ます。そして、新たな皇帝として文帝を擁立しました。この一連の政変において、謝晦は中心的な役割を果たしたと考えられています。

文帝の即位後、謝晦は地方の要衝である荊州の刺史に任じられます。これは、彼が中央から遠ざけられたことを意味していました。中央での権力基盤を失った謝晦は、文帝から少帝殺害の罪を問われ、討伐軍が差し向けられます。討伐軍を率いるのは、当時最強の武将として知られた檀道済でした。謝晦は、檀道済率いる討伐軍に対し、果敢に応戦しますが、忌置洲の戦いで大敗を喫し、捕らえられて処刑されました。かつて権勢を誇った謝晦の最期は、あまりにも劇的なものでした。

謝晦の生涯は、東晋から南朝宋へと時代が大きく移り変わる激動の時代を象徴しています。名門出身でありながら、時代の波に翻弄され、最後は悲劇的な結末を迎えた彼の姿は、歴史の残酷さを物語っていると言えるでしょう。彼の一連の行動は、簒奪という批判も免れませんが、当時の政治状況を考慮すると、一概に断罪することはできません。謝晦は、時代の犠牲者であった側面も持ち合わせているのです。

謝晦の伝記は、『宋書』巻44 列伝第4に詳しい記述があります。

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