檀道済

檀道済（たんどうせい）：宋を支えた名将、その栄光と悲劇

檀道済（? - 436年）は、東晋末から南朝宋初期にかけて活躍した武将です。劉裕に仕え、宋の建国に大きく貢献しましたが、その才能を妬まれ、最後は悲劇的な死を遂げました。

若き日の決起と功績

404年、檀道済は劉裕に従い、桓玄討伐の兵を挙げます。この戦いで彼は目覚ましい活躍を見せ、その後の北伐でも先鋒として後秦を滅ぼすなど、数々の武功を重ねました。これらの功績により、彼は征虜将軍、琅邪内史に任じられます。

宋建国、そして権力の中枢へ

東晋が滅亡し劉裕が宋を建国すると、檀道済は永修県公、南兗州刺史に任じられ、国の中枢を担う存在となります。劉裕の死後、少帝が即位すると、徐羨之らと共に少帝を廃し、文帝を擁立します。文帝の即位に伴い、征北将軍に任じられ、謝晦の討伐でも功績を挙げ、征南大将軍、開府儀同三司、江州刺史と、その地位を不動のものとしていきました。

江州刺史時代には、隠遁生活を送っていた陶淵明に仕官を勧めたという逸話も残っています。

北伐と兵糧偽装

431年、檀道済は北魏に対して北伐を敢行し、歴城まで進軍しますが、兵糧不足のため撤退を余儀なくされます。しかし、彼は撤退時に大胆な策を講じました。枡に砂を盛って米のように見せかけたり、余った兵糧を地面にばら撒いたりして、兵糧が豊富にあるかのように偽装したのです。この偽装工作により、北魏軍は宋軍の兵糧が尽きていないと思い込み、追撃をためらいました。檀道済は悠然と軍を撤退させ、宋軍の損害を最小限に食い止めたのです。

悲劇的な最期

その才能ゆえか、檀道済は文帝と対立することが多く、その勢威は天下に轟いていました。文帝は、重臣たちの讒言と、檀道済に国を奪われるのではないかという疑念にかられ、436年、彼を殺害することを決意します。捕らえられた檀道済は、文帝を睨みつけながら頭巾を床に叩きつけ、「自分を殺すことは、万里の長城を壊すことに等しい」と叫んだと伝えられています。

死後の影響

檀道済の死を知った北魏は、「もはや宋には恐るるに足る者はいない」と喜んだと言われています。また、文帝自身も、449年に北魏軍が南下し都に迫った際、「もし檀道済が生きていれば、このような事態にはならなかっただろう」と嘆いたと伝えられています。

『三十六計』との関わり

『三十六計』の中の「走為上（逃げるに如かず）」は、『南斉書』王敬則伝にある「檀公三十六策、走是上計」という言葉が語源であるとされています。

檀道済は、その軍事的な才能だけでなく、知略にも長けた名将でした。彼の死は、宋にとって大きな損失であり、その後の歴史に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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