警察用船舶

日本の警察用船舶

日本の警察が運用する船舶は、警察庁では警察用船舶、警視庁や一部警察本部では警備艇と呼ばれ、一般には警察艇とも通称されます。本稿では、これらの船舶の歴史と現状について解説します。

江戸・明治時代

江戸幕府時代には、徳川氏に подчинение した海賊衆を起源とする水軍が存在しました。大坂の陣以降、実戦の機会が減少し、武家諸法度による大船建造の禁止によって外洋行動能力を失い、水上警察としての役割を担うようになりました。

黒船来航後、横浜では1855年から御用船による洋上警戒が始まりました。1859年の横浜港開港に伴い、幕府は警吏を配置して警戒勤務に当たらせました。明治維新後の1873年には、邏卒が巡邏船を備え、港内を巡回警邏しました。

東京港では1877年、海軍省と三菱汽船から蒸気船を借り受けて警視本署に配備しました。その後、中古船2隻を取得し、借り受けた船を返還しました。1879年には水上警察署が設置され、蒸気船と端艇が配備されました。当時の警察用蒸気船は巡邏船と呼ばれ、船体には黒と赤の横線が入れられていました。警察が消防を兼任していたため、船火事の消火活動にも従事しました。1885年には初の新造巡邏船が竣工し、1887年には2隻目が竣工しました。

大正・昭和前期

大正時代には、自動車のエンジンを搭載したモーターボートが登場し、「自動艇」と呼ばれました。警視庁でも1912年から採用を開始し、昭和期以降の警察用船舶の主力となりました。これらは小型艇でしたが、起動性に優れ、任務に適していました。1923年の関東大震災では、警視庁の船舶が救助活動に活躍しました。

一方、蒸気船の運用も継続されました。1925年に新造された弥生丸は大型船でしたが、自動艇の普及により使用機会が減少し、1939年に廃船となりました。1927年には、旧海軍の駆逐艦「有明」が警察所有となりましたが、老朽化のため短期間で廃船となりました。

太平洋戦争中には燃料不足のため活動が制限されましたが、空襲の際には消火や救助活動に当たりました。終戦時には、稼働状態にあったのは一部の船舶のみでした。終戦後には、占領軍兵士によって一部の船舶が持ち出される事件も発生しました。

昭和時代後期

警視庁は戦後、旧海軍の船舶を購入し、戦後の混乱に備えました。1954年の警察法改正により、警察用舟艇の購入・配分は警察庁が直接行うことになりました。同年、警察用舟艇が警察庁の管理に統合されましたが、老朽船が多く、性能的にも不十分でした。

1956年時点で、全国10か所に水上警察署が設置されていましたが、就役船は少なく、使用可能な舟艇を持たない水上警察署もありました。その後、水上警察署を重点とした舟艇の整備が進められ、1959年には多数の舟艇が配置されました。昭和40年代後半には、港湾の整備に伴い、警察用舟艇の充実が求められるようになりました。1972年の沖縄返還に伴い、琉球政府が所有していた警備艇が沖縄県警察に配置されました。また、大規模船舶事故を踏まえて、有力な警察用舟艇が建造され、警視庁に配備されました。

平成時代以降

現在、警察用船舶は全長に応じて複数のタイプに分類されています。23メートル型は、海上犯罪対策、災害対策、重要防護施設の警備などに重点を置いています。12メートル型と8メートル型は、救助活動のためのトランサムリフトを装備しています。

海上犯罪の取締りにおいては、河川は警察、港区外は海上保安庁、港内は両者が協議して担当を決定します。

警察用船舶は、時代とともに変化しながら、水上における安全確保の重要な役割を担っています。

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