議政官

議政官（ぎせいかん）

議政官は、明治初期に存在した日本の立法府です。慶応4年（1868年）に政体書が布告され、従来の三職制から太政官の下に七官両局が置かれると同時に、議事所の後継として設置されました。議政官は、議定・参与からなる上局と、参事・貢士からなる下局の二院制を採用していました。

沿革

議政官の設置は、日本の近代化を目指す明治政府にとって重要なステップでした。以下に、その沿革を詳しく見ていきましょう。

慶応4年（1868年）閏4月21日: 政体書が布告され、議政官が設置されました。これは、従来の議事所に代わる立法権を持つ組織として位置づけられました。
同年5月24日: 下局を構成する貢士の出仕所として、貢士対策所が京都府菊亭家邸宅内に設置されました。毎月5日・15日・25日が「貢士対策日」と定められ、政府からの諮問を受けて政策を協議しました。
同年8月1日: 対策日が取りやめられ、必要に応じて諮問が行われるようになるとともに、随時文書による建白が認められました。
同年9月19日: 政体書では議政官と行政官の兼職が原則禁止されていましたが、実際には上局を構成する議定・参与の多くが行政官を兼任していました。そのため、議政官上局が廃止され、議会制度を調査するための議事体裁取調所が設置されました。
明治2年（1869年）3月7日: 議政官下局に代わり、公議所が設置されました。
同年5月13日: 議政官が正式に廃止されました。

このように、議政官はわずか1年ほどの短い期間しか存在しませんでしたが、日本の近代議会制度の基礎を築く上で重要な役割を果たしました。

権能

議政官は、日本の政治において重要な権能を持っていました。その主な権能は以下の通りです。

政体創立
法律制定
条約締結

下局は上局の指導に基づき、租税・駅逓・造幣・度量衡・条約・通商・拓彊・宣戦講和・警察・軍事・各藩間の訴訟などを管轄しました。これらの権能からも、議政官が当時の日本においていかに重要な役割を担っていたかがわかります。

まとめ

議政官は、明治初期の短期間に存在した立法府でありながら、日本の近代化に大きく貢献しました。その二院制の構造や権能は、後の議会制度に影響を与えました。議政官の歴史を理解することは、日本の近代政治史を理解する上で欠かせない要素と言えるでしょう。

参考文献

藤井新一「明治初年に於ける議会政治」『法学論集』 1, 5-27, 1964年（昭和39年）11月1日、駒澤大学
「明治初年に於ける議会政治論」『法学論集1』 p.5 - 27, 1964年（昭和39年）、駒澤大学法学会
帝国議会の貴族院 -大日本帝国憲法下の二院制の構造と機能-
* 明治憲法と日本国憲法に関する基礎的資料 - 衆議院憲法調査会事務局

もう一度検索