谷信一

谷 信一（たに しんいち）の業績と生涯

谷信一は、1905年5月8日に三重県安濃郡安西村で生まれた美術史家であり、日本近世美術史を専門としていた。彼のキャリアは東京国立博物館での勤務から始まり、その後、様々な大学で教授として多くの学生を指導した。

生い立ちと教育

谷家は素封家の駒田家に生まれ育ち、谷は父の姉の家を継いで養子となった。彼は第八高等学校を卒業した後、東京帝国大学の文学部美術史学科に進学し、1930年に卒業。同年4月には東京帝国大学の文学部の副手に就任した。彼はその後、東京帝国大学史料編纂所で嘱託の職を経て、1942年に京城帝国大学助教授として任命されるが、1946年の大学廃止に伴い、帰国を余儀なくされた。

教職のキャリア

帰国後、谷は1946年に美術研究所の研究員として働き始めた。そして1949年には東京芸術大学美術学部講師となり、1952年には神戸大学文理学部の教授に昇格する。谷は1952年から1958年まで東京芸術大学教授職を兼任し、その後も1966年まで神戸大学での教授職を全うした。退官後は共立女子大学で文芸学部の教授を務め、1975年までその任にあたった。

研究と業績

谷信一の研究範囲は非常に広く、仏教美術、絵巻物、大和絵、室町水墨画、肖像画、狩野派、土佐派、宗達・光琳派、南画など多岐にわたる。史料編纂所時代に蓄積した資料を基に、日本の中世における中国絵画の受容に関する研究を行い、その成果は1942年に出版された「室町時代美術史論」に掲載されている。その他の主要な著作としては、「近世日本絵画史論」（1941年）、日本美術の概要をまとめた「日本美術史概説」（1948年）、および「御物集成」（1972年）などがある。

また、千葉市美術館には、谷によって収集された近世日本美術コレクションが51点所蔵されている。これらのコレクションのうち10点は駒田家から受け継いだものであり、そのほかの作品は1941年から1944年にかけて一つ一つ彼自身の目で選んで購入したものである。狩野派や関東南画、英派、さらには南蘋派や長崎派といった多様な流派の作品が含まれており、彼の関心の広さを感じることができる。特に、彼が編纂した「国史肖像集成」からも分かるように、人物画が比較的多く見受けられる。

また、谷は駒田家伝来の文書約4900点を大切に保管しており、その一部は現在、三重県総合博物館に寄贈されている。

家族

谷信一の弟である駒田信二も中国文学者として知られ、二人の家庭は学問に対する強い情熱を持ったものであった。谷信一のように、彼もまた自分の専門分野で多大な功績を残している。

まとめ

谷信一は、その優れた研究と教育活動を通じて日本の美術史の発展に貢献した重要な人物である。彼の研究成果や収集品は現在も多くの人々に影響を与え、後世にわたっても語り継がれることであろう。

もう一度検索