谷利

谷 利（こく り）について

谷利は、中国の後漢末期から三国時代に活躍した人物で、詳細な生涯は不明ですが、彼の卓越した忠誠心と能力は多くの記録に残されています。『江表伝』や『水経注』に彼に関する記述があり、彼が元々奴隷であったことが示されています。この背景から、谷利は解放奴隷として新たな人生を歩み始め、孫権の側近として重用されました。

彼の性格は非常に謹直であり、また忠義を重んじる姿勢から、親近監という役職に任ぜられました。谷利は、いい加減な言動をしないことで孫権からの絶対的な信頼を得ており、重要な時には常に彼を支える存在でした。彼の活躍は、合肥の戦いをはじめとする数々の戦闘に見ることができます。

合肥の戦いでの活躍

合肥の戦いでは、孫権が急に危険な状況に直面する場面がありました。孫権は駿馬で渡し場の橋を渡ろうとしたところ、橋の南端が撤去されているのに気づかず、進退を窮しました。この時、谷利は迅速に行動し、馬に鞭を入れて孫権を飛騎させることで彼を危機から救いました。この忠誠心と的確な判断により、孫権は無事に危機を脱することができ、後に彼に都亭侯の位を授けました。

長安戦艦の進水式

谷利の功績はここに留まりません。黄武5年（226年）には、武昌で「長安」と呼ばれる巨大戦艦の進水式がありました。この船は非常に大きく、二千人を運ぶことができました。しかし、風が強まり長江の水面が荒れる中で、谷利は舵取りに対して船を武昌の樊口に停泊させるよう命じました。しかし、孫権は航行を続けることを望み、谷利はその判断を押し切る形で舵取りに剣を突きつけて樊口へ進ませました。最終的に船は樊口に接岸し、座礁してしまいました。孫権はこの出来事を「臆病な阿利」とからかいましたが、谷利は船が転覆する危険を恐れ、命令違反の死罪を覚悟して行動していたことを強調しました。この後、孫権は彼を特に大切にし、名前を呼ばず「谷」と呼ぶようになったと言われています。

三国志演義での描写

さらに、谷利は『三国志演義』にも登場し、曹操軍の張遼や楽進、李典との戦闘にも従軍しています。この戦いの中で、張遼に襲撃された際、谷利は「一旦ご乗馬を退がらせ、一気に飛ばしますれば、飛び越えられまするぞ」と孫権に提案しました。その結果、孫権は逃れることができ、戦後には谷利を厚く賞賛したとされています。

結論

谷利の忠義と能力は、彼がどのようにして歴史に名を刻む人物となったのかを物語っています。彼の勇気ある行動と判断力は、戦国時代を生き抜く者にとって大いなる教訓であり、今なお多くの人々に語り継がれています。

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