合肥の戦い

合肥の戦い：魏呉の攻防

合肥の戦いは、後漢末期から三国時代にかけて、魏と呉が合肥（現在の安徽省合肥市）を巡って繰り広げた一連の戦いです。この地域は、魏にとっては南方の要衝であり、呉にとっては長江流域の完全掌握と外征の足掛かりとなる重要な拠点でした。三国時代を通じて、両軍はこの地で激しい攻防を繰り広げましたが、最終的な決着はつきませんでした。

合肥城の位置と戦略的重要性

合肥城は、巣湖の北岸に位置し、魏にとっては長江流域における重要な前線基地でした。一方、呉にとっては、長江流域の完全な支配と、さらなる北進を可能にするための要衝でした。このため、合肥城は両国にとって戦略的に非常に重要な場所であり、度重なる争奪戦が繰り広げられました。合肥城の守備は、張遼、楽進、満寵といった魏の名将たちが担当し、呉軍は巣湖南岸の濡須口に砦を築き、対抗しました。

劉馥による合肥城の整備

200年頃、孫策の死後、その勢力を継いだ孫権に対し、廬江太守の李術が反乱を起こしました。また、雷緒や陳蘭といった勢力も蜂起し、長江・淮河流域は混乱に陥りました。当時、袁紹との戦いに注力していた曹操は、この地域の鎮撫に劉馥を任命しました。劉馥は荒廃していた合肥城に入り、行政機関を整備し、雷緒らを帰順させました。さらに、屯田や灌漑事業を推進し、教育機関を整備するなど、民政を立て直し、備蓄を増やしました。劉馥は合肥城が国家にとって極めて重要な拠点になると考え、城壁や土塁を強化し、敵の攻撃を防ぐための木や石、魚油などを備蓄するなど、徹底的な戦争準備を行いました。この劉馥による整備が、後の戦いで呉軍を大いに苦しめることになります。

主要な戦役

第一次戦役（208年）

赤壁の戦いで曹操軍が敗北した後、孫権は自ら軍を率いて合肥城へ侵攻しました。曹操は張喜と蔣済に援軍として1000人の兵を派遣しますが、蔣済は偽の書簡を使い、4万の援軍が向かっていると呉軍を欺きました。孫権はこれを信じ、軍を撤退させました。その後、曹操自身も合肥に出陣し、兵力や武将の編成を行いました。

第二次戦役（215年）

呂蒙の進言により、孫権は再び合肥城への攻撃を開始しました。この時、合肥城には張遼、楽進、李典という3人の将軍がいましたが、兵力はわずか7000人でした。曹操からの命令で、張遼と李典が出撃し、楽進は薛悌を守ることになりました。張遼は夜中に兵を募り、800人の精鋭を率いて孫権の本陣に奇襲をかけました。張遼は自ら先頭に立って敵陣を切り裂き、孫権を追い詰めるほどの活躍を見せました。孫権軍は張遼の猛攻に恐れをなし、撤退を開始しました。撤退時、孫権は張遼の追撃を受けましたが、部下の奮戦により辛くも脱出に成功しました。この戦いで、張遼は寡兵で大軍を打ち破るという、類まれなる武勇を示しました。

合肥新城の築城とその後

230年代に入ると、孫権は毎年のように合肥への侵攻を試みました。そこで、満寵は合肥城の弱点を指摘し、北西に新たな城を築くことを提案しました。蔣済は反対しましたが、満寵は築城の利点を主張し、曹叡の許可を得て合肥新城が築かれました。233年には、孫権が合肥新城に攻め寄せましたが、満寵の伏兵により撃退されました。234年にも、孫権は大軍を率いて合肥新城を包囲しましたが、満寵の奮戦や曹叡の親征を知り、撤退しました。その後も、合肥新城を巡る攻防は何度か行われましたが、大きな戦果は上がりませんでした。268年の戦いが、三国時代における合肥方面での最後の戦いとなりました。

合肥の戦いは、魏と呉の国力を大きく左右する重要な戦いであり、数々の英雄や知略が交錯する舞台となりました。この戦いの歴史は、三国時代の戦略や人物像を深く理解する上で欠かせない要素です。

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