谷汲鉄道デロ7形電車

谷汲鉄道デロ7形電車の概要

谷汲鉄道デロ7形電車は、1927年に谷汲鉄道によって導入された電動車両であり、特に谷汲山華厳寺への参拝客輸送を目的に設計されました。この鉄道は、黒野から分岐して谷汲へ至る路線を1926年に開設し、翌年には相互直通運転を開始しました。デロ7形は6両が製造され、美濃電気軌道によっても類似のセミシ67形電車が10両導入されました。

導入の背景と特徴

当時、谷汲山華厳寺では大規模な参拝が期待されており、この需要に応えるために車両の増備が計画されました。デロ7形は、前年に導入された半鋼製4輪単車のセミシ64形を基に設計され、連結運転が可能な仕様となっていました。特に急勾配に対応するため、電磁吸着ブレーキも取り入れられる予定でしたが、イギリスから発注した電装品の納期遅延に伴い、最初の車両は設計変更を余儀なくされました。

結果として、谷汲デロ7形は無事落成したものの、当初搭載予定だった電磁吸着ブレーキは全車外されることになり、セミシ67形についても一部は直接制御方式で運用されました。このような臨時的な仕様変更がありながらも、デロ7形はご開帳輸送時に活躍し、後に原設計どおりの電装品が追加されることになります。

車両の仕様

デロ7形とセミシ67形は、共通の仕様を持ち、長さ9,144mm、幅2,514.6mmの半鋼製車体を持ちます。車両の外観は美濃電セミシ64形を踏襲し、片側に2つの片開式客用扉と8枚の二段構造側窓を備えています。車内はロングシート仕様で、吊り革や荷棚が設置されています。

制御方式は間接自動制御に対応しており、イングリッシュ・エレクトリック製の主電動機を搭載して、最大2基のモーターが全軸につながっています。台車はブリル21-E台車の模倣製品を使用しています。連結器も柴田式の自動連結器が取り付けられており、連結運転に対応可能です。

運用の経緯

デロ7形およびセミシ67形は、1927年の春季のご開帳に合わせて運用を開始しましたが、当初の運行は手動ブレーキによるものでした。また、急勾配区間の運行には特別認可を得て、乗務員が特別に設けた停止券を使用していました。さらに、合併や形式称号の改訂にともない、両形式の番号や呼称も変更されていきました。

特にデロ7形は、戦後に名古屋鉄道に吸収合併されると、その形式はモ80形に改称されました。以降、モ70形として運用された車両は、西尾線や他の路線でも活躍し、集電装置の変更や改造が行われています。

戦後の展開

第二次世界大戦後、新たに空気制動装置が追加され、多数の車両が改造を受けました。しかし、これにより線路への追従性が低下し、脱線事故が頻発しました。そのため改造されたモ110形などが連接構造のボギー車に改造されることとなりました。その後、残存した車両は形式消滅し、全ての車両が廃車または解体される運命を辿ります。

このように谷汲鉄道デロ7形電車は、その設計から運用に至るまで多くの歴史的な背景を持つ重要な存在であり、今日の鉄道の発展の一端を担ったと言えるでしょう。

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