谷豊

谷豊（ハリマオ）の生涯



生い立ちとマレーでの生活



1911年、福岡県で生まれた谷豊は、幼少期に家族と共にイギリス領マレーに移住しました。父は現地で理髪店を経営し、豊はマレーの文化に親しみながら成長しました。一時帰国して日本の小学校に通いましたが、再びマレーに戻り、現地の友人たちと青春時代を過ごしました。腕っぷしが強く、兄貴分として慕われる一方で、イスラム教に帰依するなど、マレー文化に深く影響を受けました。

盗賊団の結成



1931年、徴兵検査のために帰国しましたが、身長が足りず兵役には不適格とされました。その後、職を転々とする中で、マレーへの強い望郷の念を抱き、密航を試みることもありました。1933年、マレーで妹が殺害される事件が起こり、激怒した豊は単身再びマレーへ。そこでマレー人の友人たちと徒党を組み、盗賊団を結成しました。彼らは華僑を主な標的として、数年間マレー半島を転々としながら活動しました。

日本軍への協力



大東亜戦争が勃発すると、日本軍はマレー半島攻略のために、現地に詳しい諜報員を必要としていました。そこで白羽の矢が立ったのが、マレー半島で活動する盗賊団「ハリマオ」を率いる谷豊でした。満州国の警察官であり諜報員である神本利男の説得により、谷は日本軍への協力を決意します。最初は抵抗したものの、神本の熱意とマレーへの理解に心を動かされたのです。そして、かつての仲間たちを呼び集め、ハリマオ盗賊団は再結成されました。

ジットラ・ラインの攻略



再結成されたハリマオ一党は、マレー半島北部のジットラという町で、イギリス軍の要塞「ジットラ・ライン」の建設を妨害する工作を行いました。谷は仲間と共に要塞に潜入して測量を行い、そのデータを日本軍に提供しました。また、労働者に紛れて資材の破壊や建設機器の妨害など、実力行使も行いました。これらの妨害工作によりジットラ・ラインの建設は大幅に遅延し、日本軍の侵攻を成功に導く一因となりました。

マラリアによる死



諜報活動中、谷はマラリアに感染してしまいます。日本軍が保有していた特効薬のキニーネを拒否し、現地の伝統療法に頼ったことが原因で、病状は悪化。ジョホーバル野戦病院に入院しますが、十分な治療を受けることはできませんでした。その後、シンガポールの病院に転院しますが、衰弱は日に日に進み、1942年3月17日、短い生涯を終えました。30歳でした。

死後



谷の死は、日本軍によって戦意高揚のシンボルとして利用され、「マレーのハリマオ」として大々的に宣伝されました。戦時中には映画化もされ、そのイメージは戦後もドラマや漫画として受け継がれました。しかし、軍国主義のシンボルとしての側面から、批判も集まるようになり、次第に風化していきました。20世紀末になって、谷豊は再評価され、マレーシアでもドキュメンタリー番組が制作されるなど、その生涯が改めて注目されるようになりました。

ハリマオを扱った作品



  • - 映画
- 『マライの虎』（1943年）
- 『ハリマオ』（1989年）
  • - テレビ
- 『快傑ハリマオ』（1960年）
- 『ルパン三世 ハリマオの財宝を追え!!』（1995年）
  • - オリジナルビデオ
- 『岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説 マレーの虎』（2005年）
  • - 小説
- 『死ぬときは独り』
- 『ハリマオ』
- 『英雄伝説-Harimao-』
  • - 戯曲
- 『虎・ハリマオ―北村想戯曲集』
  • - 漫画
- 『翡翠峡奇譚』
- 『ロボット残党兵』

参考文献



  • - 中野不二男『マレーの虎 ハリマオ伝説』
  • - 土生良樹『神本利男とマレーのハリマオ マレーシアに独立の種をまいた日本人』
  • - 山本節『ハリマオ マレーの虎、六十年後の真実』

関連項目




外部リンク



  • - 実在した少年時代のヒーロー・ハリマオ萬晩報 1999年6月13日記事
  • - Tiger of Malaya (1943)Singapore Film Locations Archive

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