豊澤新左衛門

豊澤新左衛門（とよざわ しんざえもん）

豊澤新左衛門は、文楽の世界で評価される義太夫節三味線方の名跡であり、実際には初代と二代が存在します。初代は1833年に生まれ、1886年に54歳で没しました。彼の名は、主にその技巧や声の美しさで知られています。

初代豊澤新左衛門

初代豊澤新左衛門（本名：稲垣新助）は、文楽界の重要な人物であり、師匠のもとで厳しい修行を積み上げました。彼は、初めに豊澤松之助という名前で活動し、その後の名が豊澤仙八を経て、新左衛門へと改名しました。彼が新左衛門となった背景には、師である豊澤廣助の名跡を承継する思いがあったといいます。

新左衛門は竹本系の様々な太夫と共に演奏し、特に六代目竹本綱太夫との組み合わせが大変人気を博しました。二代目竹本織太夫の時代には『三十三間堂棟由来』を流行らせ、広く知られています。この作品は長らく忘れ去られていましたが、彼と綱太夫の組み合わせによって再び注目されるようになりました。

彼の演奏スタイルは、独特のリズムと音色で、特に「逃げるようなスピード感」と「温かみのある響き」が特徴でした。これは、当時の人々に深い感動と楽しみを与え、名声を得る要因となりました。明治14年の市村座での公演では、綱太夫と共に500円という高額な給料を手にしたこともあるほどです。

また、彼は義理の息子となる二代目豊澤團平と長い付き合いを持っており、その結果、継承問題も絡んだ家族間の人間関係が築かれました。彼の死後も、その存在感は長く語り継がれることとなります。

二代目豊澤新左衛門

二代目豊澤新左衛門は1867年に生まれ、戦時中の1943年に没しました。彼は元々豊澤松太郎の弟子として育ち、その後豊澤松吉として文楽界に登場しました。初代新左衛門の義理の息子としても知られる彼は、文楽の技術を受け継ぎ、次第に頭角を現しました。

彼の初舞台は、初代豊竹呂太夫との共演でした。文楽界における彼の活動は多岐にわたり、相三味線として二代目春子太夫と長い間コンビを組んだほか、数々の名演を披露しました。二代目は初代の急逝を受けて、襲名披露を行うこととなったことも特筆に値します。

長く続いた二代目春子太夫との相三味線の関係は、彼の活動の中で非常に重要なものであり、彼らの演奏は聴衆に深い印象を残しました。また、大正末から昭和にかけての変遷の中、彼自身も様々な三味線方と共演し続け、持ち歌を残すなど活躍しました。

彼は77歳で亡くなるまで、多くの後進達に影響を与え、その存在は文楽界において欠かせないものとされました。また、初代新左衛門と同じように、彼もその音色や表現方法の美しさで至高の評価を受けていました。

まとめ

豊澤新左衛門を実現させた二人の名跡は、文楽の伝統を今に伝える重要な存在です。その魅力は今でも多くの人々に親しまれており、後進に受け継がれるべきものであることは間違いありません。彼らの技術や表現は、文楽の発展の礎となり、不滅の名作として記憶されるでしょう。

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