象潟地震

象潟地震の概要

象潟地震は、江戸時代後期の文化元年6月4日の夜、現在の秋田県で発生した大規模な地震です。この地震は津波を伴い、特に出羽国を中心に甚大な被害をもたらしました。地震が発生する3年前には、鳥海山が東側斜面から噴火を始め、溶岩円頂丘が形成されるなど、地殻の変動が続いていました。地震自体は、享和元年7月2日に記録された火山活動と時期が重なっており、『田中又右衛門聞書』には地震の瞬間に鳥海山が雷のような音を立てたとされています。

地震の記録

この地震が発生する数ヶ月前の5月下旬から、象潟付近では小さな鳴動が聞こえ始め、長岡や小瀧では井戸の水位が低下し、濁りが見られました。地震が発生したのは人々が就寝していた夜中であり、多くの建物が崩壊し、多数の犠牲者が出ました。近江八幡でも有感地震として記録され、6月には酒田や鶴岡で余震が続いたことが確認されています。特に、6月6日の余震は強く、酒田で15軒の家が倒壊し、津波の影響もありました。

地震の規模

象潟地震は、現代的な観測記録が存在しないため、地震の詳細な数値は推定に基づいています。河角廣の研究によると、マグニチュードはおおよそ7.1とされています。一部の研究では、震度分布から7.3、あるいは震源断層モデルを基に7.5との推定もあります。発震は象潟の沖合で長さ42kmの高角逆断層によるものであるとされています。

被害の状況

地震により、由利郡、飽海郡、田川郡では特に多くの被害が発生しました。本荘城では建物が大破し、周辺の本荘藩や庄内藩の領土で5500軒以上の家屋が潰れ、366人が亡くなったとされています。液状化現象や地割れが各地で見られ、中でも象潟や遊佐の倒壊率は70%に達しました。地割れからは泥水が噴き出し、地下水の井戸からは水が噴水のように吹き出す現象も報告されています。

津波の影響

地震発生後、津波が襲来しました。一旦海水が引き、その後に押し寄せた津波は、いくつかの川を遡ったとされています。具体的には、金浦では河川が氾濫し、港に被害をもたらしました。酒田や吹浦では津波の高さは3.5mに達し、市街地にも浸水し、農地が荒廃しました。津波の波源域は約60kmに及ぶと推定されています。

地殻変動とその影響

地震の直後、象潟の沿岸部では南北約25kmに渡って隆起が観測されました。この隆起により、従来は海にあった土地が陸地化し、新たに形成された田んぼが現れました。特に象潟では約2mの隆起が見られ、一部の地域では沈降も生じています。この地殻変動は地域の地形に大きな影響を与えました。

雷電の旅日記

名大関・雷電爲右エ門は、地震から2ヶ月後に象潟を訪れており、その様子を『雷電日記』に記録しています。この旅日記は、江戸時代の大関の興行記録を中心にまとめられていますが、地震に関する記述は彼が受けた衝撃の大きさを示しています。地震の影響は周囲の人々に甚大な影響を及ぼし、後の時代にも語り継がれることとなります。

象潟地震は、科学的な観察が進んでいない時代の大災害であり、後の地震学においても重要な研究対象となっています。

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