貞享義民記念館

貞享義民記念館について

貞享義民記念館は、1686年（貞享3年）に松本藩で発生した百姓一揆、通称「貞享騒動（加助騒動）」を記念し、その遺産を保存・展示する目的で1992年（平成4年）に設立された安曇野市立の施設です。この記念館は、騒動の中心人物であった中萱村の元庄屋、多田加助を始めとする義民たちの偉業を称え、その精神を後世に伝える重要な役割を担っています。

設立の背景と理念

記念館設立の根底には、単なる年貢軽減運動としてだけではなく、身分制度が厳しかった封建社会において「人間としての尊厳」を求めた加助たちの強い意志を現代に伝えたいという願いがあります。彼らの行動は、現代における「人権主張」と同義であると捉えられ、安曇野の歴史における重要な出来事として、その意義を永続的に顕彰することを目的としています。また、「ふるさと創生」の一環として、「人間として生きる権利の主張」をテーマに、この記念館は設立されました。

施設の特色

記念館の建物は、その独特なデザインにも意味が込められています。ハの字型に設計された建物は、訪れる人々を両手を広げて迎え入れるような温かさを表現しています。外壁を覆うタイルは、一揆に参加した1万人の百姓たちを象徴しており、その硬く組み合わされた様子は、権力に屈しない義民たちの強固な意志を表しています。また、館内のホール天井は、蓑笠の笠を模しており、これは「車廻状」の意も込めたデザインとなっています。

正面入り口の左右には、それぞれ日本国憲法第11条・12条と、世界人権宣言第1条の碑文が日本語と英語で刻まれており、この場所が人権を尊重する施設であることを強く示しています。館外には井戸があり、地下130mから汲み上げられた水が常時流れています。これは義民たちの清らかさを表すと同時に、水不足に悩まされていた当時の状況を想起させ、潤いをもたらすという意味も込められています。

義民シアター

館内にある夢道場では、「貞享義民物語」が上映されており、切り絵を用いた立体映像（トリックイマジネーション）で、騒動の全貌を視覚的に再現しています。17分の上映時間で、来館者は歴史的な出来事をより深く理解することができます。

主な展示品

記念館では、一揆に関連する様々な資料が展示されています。これには、「信府統記」（コピー）、加助木像のレプリカ（実物は道を挟んだ向かいの貞享義民社に安置）、騒動時に藩と村の間で交わされた文書などが含まれています。これらの展示品を通じて、当時の状況や人々の思いを知ることができます。

特記事項

2002年（平成14年）11月には、当館を中心に「第6回全国義民サミット」が開催され、記念館の10周年を祝いました。また、2008年（平成20年）3月には、国際連合人権高等弁務官事務所のホームページで、記念館が「田圃のまん中に世界人権宣言の碑文」がある場所として写真付きで紹介されました。さらに、2009年（平成21年）11月には、「第12回全国義民顕彰集会 in 安曇野」の会場の一つとしても利用されました。

交通アクセス

記念館へのアクセスは以下の通りです。

鉄道：JR大糸線中萱駅から徒歩約10分。
自動車：長野自動車道安曇野ICから車で約15分。

関連リンク

* 貞享義民記念館

この記念館は、歴史的な出来事を記念するだけでなく、人権尊重の重要性を現代に伝える施設として、多くの人々に訪れていただきたい場所です。

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