貨幣学

貨幣学とは

貨幣学（numismatics）は、貨幣とその形態史に関する科学的な研究を指します。日本では、古銭学、古泉学、銭貨学とも呼ばれますが、日本銀行金融研究所などでは「貨幣学」という呼称が用いられています。

貨幣学の研究対象

貨幣学者は、硬貨の研究を主に行うと思われがちですが、実際には紙幣、株券、メダル、代用貨幣など、幅広い対象を研究しています。小切手や銀行券、クレジットカードも研究対象となり得ます。古代の貨幣は珍重されますが、物々交換に使われた物品は、たとえ通貨として使われていたとしても、貨幣学の対象とはなりません。例えば、キルギスで馬が主要通貨単位として使われていたとしても、貨幣学の研究対象となるのは羊皮などです。

貨幣の使用や発展に関する経済的・歴史的研究と、貨幣の物理的な具体化に関する研究は区別されます。貨幣の起源に関する経済学的な理論は、貨幣学とは異なる分野に属します。

貨幣学の歴史

歴史学において貨幣史を最初に扱ったのは、ブローデルです。彼は著書『地中海』で、16世紀の地中海地域の価格メカニズム形成史について言及しました。また、貨幣の研究は、当初、貨幣を骨董品として評価するためのカタログ作成が中心でしたが、ドイツ人歴史家ロルフ・シュプランデルが、博物館や図書館の貨幣室に所蔵されている貨幣を分析・研究する方法を確立し、貨幣学が学問として確立するきっかけとなりました。

貨幣学者

貨幣学者とコイン収集家は、しばしば区別されます。貨幣学者は、貨幣の図案や構造に関する知識の習得に関心がある一方で、コイン収集家は、異なるデザインの貨幣を収集することに喜びを見出します。しかし、多くの貨幣学者は収集家でもあり、その逆もまた然りです。ウォルター・ブレーンのように熱心な収集家ではない貨幣学者もいれば、ファルーク1世のように貨幣学にはほとんど興味がなかったが熱心なコイン収集家であった人もいます。ハリー・バスのようにコイン収集家であり、貨幣学者でもあった人物もいます。

日本では田中啓文がコイン収集家として有名です。日本銀行金融研究所貨幣博物館に所蔵されている貨幣の多くは、第二次世界大戦中に日本銀行に寄贈されたものです。

現代では、貨幣学者は自身の調査報告をインターネット上で公開することが多くなりました。スコット・バルソンのように、30年間も現地で初期の南アフリカの貨幣学的歴史を研究した例もあります。彼の研究により、南アフリカで最初に広く流通した通貨は、1874年に東グリカランドで貿易会社のストラッチャン会社によって発行された代用貨幣であったことが明らかになりました。

また、貨幣学者は、造幣局やその他の機関の記録を用いて、貨幣の希少性を測定したり、歴史的背景と照らし合わせて貨幣の用途や鋳造量を調査したりします。彼らは、貨幣の種類、エラー貨幣、金型の摩耗、描かれている人物、さらには貨幣が鋳造された社会政治的背景にも関心を抱いています。

多くのプロの貨幣学者は、商用目的で硬貨の鑑定や格付けを行っています。硬貨のコレクションを業者に売却したり、購入することは、貨幣の研究をさらに進めることにつながります。熟練した貨幣学者の中には、歴史学者や博物館の学芸員、考古学者から助言を得る人もいます。

関連項目

日本銀行金融研究所貨幣博物館
貨幣史
金貨
硬貨
皇朝十二銭
紙幣
収集型[[金貨]]
地金型金貨
日本貨幣商協同組合
Portal:貨幣学

外部リンク

Royal Numismatic Society of Britain - イギリス貨幣学サイト(英語)
Research on Strachan and Co Coins - アフリカの最初の貨幣検証サイト(英語)
Free Coin Organizer Software - 古代硬貨のデータソフトをダウンロード出来るサイト(英語、全てzip形式)
www.harrybassfoundation.org - 世界的貨幣収集家ハリー・バス氏の財団公式サイト(英語)
What is a coin - 硬貨の歴史と情報のサイト(英語)
Coin Value Determination Guide - コイン情報サイト(英語)
Coin Collecting
Numispedia Encyclopedia - ニューミスペディア、オンライン硬貨百科事典(ドイツ語)
日本銀行金融研究所公式ホームページ
日本銀行金融研究所 貨幣博物館公式ホームページ
日本貨幣商協同組合公式ホームページ
『貨幣学』 - コトバンク

もう一度検索