貴嶺問答

貴嶺問答（きれいもんどう）

貴嶺問答は平安時代の末期に成立したとされる文書で、全65条なる消息文例をまとめた作品です。著者は中山忠親とされ、内容には当時の公事や儀式、摂関家の行事についての質疑応答が盛り込まれています。特に、治承2年（1183年）の出来事である木曾義仲の入京や東大寺大仏の再建に言及していることから、建久年間の前後に書かれたものと考えられています。

この作品は正月から12月までの往復の消息を取り入れており、形式としては往来物の体裁を整えていますが、その主な目的は有職故実に関する知識の集約にあります。公家の子弟に向けての教育を目的としており、実用性よりも資料の貴重性が重視されています。特定の文通者の氏名や日付については記載がないことが多く、個別具体的な事情に縛られない一般的な文例として扱われることが多いです。

貴嶺問答は、往来文における書き方の要点に触れた記述も含まれており、これは後世における日本の書札礼の重要な基盤とも考えられています。そのため、当時の文筆文化や交わりの形式について研究する際には、貴嶺問答の内容が大変参考になるとされています。

また、作品自体は多くの文献において言及されており、紀元的な位置づけやその影響力が示されています。石川松太郎の「国史大辞典」や、上島有の「日本史大事典」、籠谷真智子の「平安時代史事典」、島田鋭二の「日本歴史大事典」といった複数の文献に登場し、その独自の文体や編集意図が語られています。

貴嶺問答は、その独特な形式や内容が、平安時代という特定の歴史的文脈の中でどのように機能していたのかを知るうえで重要な資料であり、文学や歴史研究の分野においても注目されています。時代の道具としての消息文が持っていた役割や、それがどのようにして公家社会における文化や習慣の形成に寄与したのかを知るための貴重な窓口となっています。時代背景や文化的な要素が複雑に絡み合うなど、研究のし甲斐があるテーマであると言えるでしょう。

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