貿易庁

貿易庁とは

貿易庁は、第二次世界大戦後の1945年12月15日から1949年5月25日にかけて存在した商工省の外局です。戦後の混乱期において、連合国軍最高司令部（GHQ）の管理下にあった日本の貿易を一元的に管理・運営する役割を担いました。本記事では、貿易庁の設立経緯、その機能、そして短命に終わった背景について解説します。また、貿易庁の管轄下にあった貿易公団（1947年5月22日～1951年1月31日）についても解説します。

設立の背景

第二次世界大戦後、日本の貿易はGHQの厳格な統制下に置かれました。GHQは、日本政府に対し、国民の生活を維持するための最低限の輸入、そしてその輸入代金を支払うための輸出のみを許可しました。これは「疫病と不安」を防止するという名目のもと、社会秩序を維持するための措置でした。

同時に、戦時中に貿易統制を行っていた交易営団の廃止を命じました。日本政府はGHQの方針に従い、貿易を一元的に取り扱う組織として貿易庁を設立しました。

貿易庁には、長官官房、総務局、輸出局、輸入局の3局が置かれました。

貿易庁の機能

当時の日本の貿易は、日本側は貿易庁が窓口となり、実務は指定業者（商社）が行いました。輸出は44社、輸入は45社が指定されました。貿易相手国側の窓口はGHQのみでした。

為替レートは固定されておらず、日本国内での輸出入品の取引は、貿易庁が設置した貿易資金特別会計を通じて、日本円による公定価格で決済されました。一方、日本国外での外貨による輸出入品の取引は、GHQの日本貿易勘定を通じて決済されました。

また、外国人向けホテルも貿易庁直営で建設されました。これは、外国からの関係者を受け入れるためのインフラ整備の一環でした。

貿易公団の設立

1947年に独占禁止法が制定されると、貿易庁が指定業者に独占的に取引をさせる形態が、同法に抵触する可能性が指摘されました。この問題を解決するため、同年4月15日に貿易公団法が公布され、5月22日に「鉱工品」「繊維」「食糧」「原材料」の4つの貿易公団が設立されました。貿易公団は7月1日から業務を開始し、貿易の実務を統括する役割を担い、貿易庁は監督官庁となりました。

貿易庁の終焉

1947年8月、GHQは制限付きながら民間による輸出を許可し、翌年には制限を解除しました。1949年以降は、外国商社が日本国内に支店や事務所を設けて取引を行うことが可能になりました。この変化に対応するため、当時の第3次吉田内閣は産業・貿易振興を効率的に行うことを目指し、以下の措置を講じました。

1949年3月31日：食糧・原材料の両貿易公団を廃止
1949年5月25日：商工省を通商産業省に改編し、貿易庁などの外局を本省業務に組み込む

これにより、貿易庁は廃止されました。

繊維・鉱工業の両貿易公団は、その後も通商産業省の監督下で存続しましたが、繊維貿易公団は1950年12月31日に、鉱工業貿易公団は1951年1月31日に廃止されました。

歴代長官

初代：向井忠晴（1945年～）
第2代：塚田公太（1946年～）
第3代：永井幸太郎（1947年2月～）
第4代：白洲次郎（1948年12月～）

関連項目

永山時雄
パレスホテル東京（前身は貿易庁直営の旧・HOTEL TEITO）

貿易庁は短命な組織でしたが、戦後の日本の貿易再開と経済復興において重要な役割を果たしました。その存在は、日本の経済史における重要な一幕と言えるでしょう。

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