賀原夏子

賀原 夏子

賀原夏子（かはら なつこ）は、1921年1月3日に東京で生まれました。彼女は、日本の女優・演出家として数々の舞台や映画、テレビドラマに出演し、演技と演出の両面で多くのファンから愛されています。本名は塚原初子であり、彼女の芸能人生は70年を超える長いものでした。

出身と初期の経歴

賀原は東京府牛込区に生まれ、父は東京農業大学の理事を務めていた塚原周吾、祖父は東洋汽船の創設者でした。教育を受けたのは東洋英和女学校で、1938年には同校を卒業します。在学中に新築地劇団の公演を観て感銘を受け、後に文学座に入座するきっかけとなりました。彼女は文学座の初期メンバーとして、演技の研鑽を積むことになります。

舞台での活動

賀原夏子は1939年に《父と子》で初舞台を飾ります。19歳での老け役という大胆な演技が注目を浴びました。その後、戦後も《女の一生》や《二十六番館》、《島》などの作品で、老け役として活躍を続けました。特に、彼女が演じた人のいいおばさんやずる賢い老女、意地悪い姑といったキャラクターは、多くの観客に愛されました。

1963年、彼女は文学座を脱退し、新たな劇団NLTを結成します。この劇団では、自身が主宰としてフランス喜劇の上演に力を注ぎ、数々の舞台を成功に導きます。特に《サド侯爵夫人》の上演は大きな成功を収めました。

映画とテレビドラマへの出演

賀原は映画にも多く出演し、1946年に公開された《大曾根家の朝》が彼女の映画デビューとなります。その後、松竹、東宝などの作品で、脇役を中心に多様なキャラクターを演じました。特に、成瀬巳喜男監督の作品に頻繁に出演し、その存在感を示しました。

テレビドラマでも、《これが青春だ》シリーズや《チャコちゃんシリーズ》など、数多くの作品に出演し、その幅広い演技力で様々な役をこなしました。

演出家としての業績

舞台での実績を基に、賀原は演出家としても名を馳せました。《ロマノフとジュリエット》や《ササフラスの枝にそよぐ風》等の作品を手掛け、演出家としての才能を発揮しました。彼女の演出スタイルは、観客を引き込む力強さと、キャストの表現力を引き出すもので、多くの観衆に感動を与えました。

最晩年と遺産

1991年、賀原は東京都港区の病院で卵巣癌により70歳でこの世を去りました。彼女は入院直前まで舞台に立ち続け、その姿勢は多くの後進の女優たちに影響を与えました。遺灰は海に散骨されても、彼女の芸術への情熱は今もなお生き続けています。また、彼女の功績を称え、1993年には養子の塚原純江による記録著書《海に還る 女優・賀原夏子》が出版されました。

受賞歴

賀原夏子の業績は、数々の賞によっても評価されています。1958年には岸田国士賞、1985年には紫綬褒章を受賞し、また同じ年に菊田一夫演劇賞の特別賞も受賞するなど、彼女の貢献は日本の演劇界において高く評価されています。彼女の影響は今も多くの人々に受け継がれています。

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