賀茂季鷹

賀茂季鷹：江戸時代後期の歌壇を彩った文人

賀茂季鷹（かも の すえたか、1754年2月27日 - 1841年11月21日）は、江戸時代中後期を代表する国学者、歌人、そして賀茂別雷神社の神職でした。山本姓をもち、生山、雲錦という号で知られています。

京都の賀茂別雷神社の社官の子として生まれた季鷹は、12歳の時に叔父である賀茂季栄の養子となります。若き日には有栖川宮職仁親王から和歌の手ほどきを受けました。19歳で神社の職を辞し、江戸へと移り住み、そこで加藤千蔭、村田春海、三島自寛といった著名な学者や歌人たちから和歌や古学を学びました。さらに、太田南畝ら狂歌師とも親交を結び、自身も狂歌を詠むなど、幅広い交友関係を築きました。

38歳になった春、季鷹は京都の賀茂に戻り、賀茂別雷神社の神職として奉職。正四位下安房守に任じられるなど、順調にキャリアを積んでいきます。その後、彼は自身の邸宅に雲錦亭、歌仙堂を建造し、そこで歌会を催しました。さらに、和漢書1000巻を収蔵する文庫を建設するなど、文人としての活動拠点として充実させていきました。

小沢蘆庵の没後、季鷹は京都における代表的な歌人の一人となりました。香川景樹とともに、化政・天保期の京都歌壇の中心人物として活躍し、その歌風は雅びで格式高い堂上風として知られています。当時の著名な文人たちと幅広く交流し、歌壇のみならず、文化全般に大きな影響を与えました。

季鷹は多くの弟子を育成し、その教えは後世の歌壇に大きな影響を与えました。主な弟子には安田躬弦、斎藤彦麿、松田直兄らがいます。

季鷹の著作は多岐に渡り、その学識の高さを示しています。代表的な著作物として、家集である『雲錦翁家集』、紀行文『富士日記』、門人と共著した『みあれの（美阿礼乃）百草』などが挙げられます。その他にも、『伊勢物語傍註』『正誤仮名遣』『万葉集類句』『詠歌概言』といった、国学や歌学に関する著作を数多く残しています。これらの著作は、後世の研究者にとって貴重な史料となっています。

晩年、季鷹は北区西賀茂の小谷墓地に埋葬されました。彼の生涯は、江戸時代後期の文化・学問の発展に大きく貢献した、まさに時代の寵児であったことを物語っています。その功績は、現在もなお高く評価され、多くの研究者や歌人たちによって引き継がれています。彼の残した作品や弟子たちを通して、賀茂季鷹は今もなお、日本の文化史に輝く一人の文人として記憶されています。

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