高樹町

高樹町の歴史と変遷

高樹町（たかぎちょう）は、かつて東京都港区南青山に位置していた町名です。この地域は、江戸時代には河内丹南藩の高木邸をはじめとする武家地でした。1873年（明治6年）にこれらの土地が統合され、新しい町として「高樹町」が誕生しました。町名の由来は、高木家の「木」の字を「樹」に置き換えたことにあります。

高樹町の範囲は、現在の骨董通りの東側半分周辺から西麻布を含む六本木通り沿いに広がっていました。この地域は、幹線道路沿いにはブティックやオフィスビルが建ち並び、路地には高級マンションや邸宅が点在する、洗練された街並みを形成していました。高樹町交差点の先には、日本赤十字社医療センターへと続く日赤通り商店街がありました。

明治時代以降、高樹町は邸宅街として発展しましたが、1965年（昭和40年）に住居表示が実施されたことで、南青山の一部となり、町名としての高樹町は消滅しました。

ロケ地としての高樹町

高樹町は、1970年代を中心に、映画やドラマのロケ地として頻繁に利用されていました。特に高樹町交差点周辺や富士フイルム西麻布ビル（旧本社ビル）がよく使われました。主な作品としては、「フレッシュマン若大将」（1969年）、「ブラボー! 若大将」（1970年）、「俺の空だぜ! 若大将」（1970年）などの若大将シリーズ、「日本一の断絶男」（1969年）、「日本一のワルノリ男」（1970年）などのコメディ映画、「直撃地獄拳 大逆転」（1974年）、「君よ憤怒の河を渉れ」（1976年）、「腐蝕の構造」（1977年）、「ホワイト・ラブ」（1979年）などが挙げられます。

高樹町に存在した施設

高樹町には、戦時中に資源調査を目的とした研究機関である資源科学研究所が設置されていました。しかし、1945年（昭和20年）5月の東京大空襲（山の手大空襲）により、研究所を含む周辺一帯が焼失しました。戦後、研究所は百人町に移転しました。

また、1954年（昭和29年）には、ファッションデザインの専門学校であるセツ・モードセミナーが開校し、1965年（昭和40年）に移転するまでの約10年間、多くの芸術家を育成しました。

1970年代から1980年代にかけては、新日本プロレスの初代本社事務所が、現在のコシノジュンコビルに隣接する井植ビル（現在は取り壊され、跡地にはコンシェリア南青山が建っています）に入居していました。新日本プロレスの本社は、その後中野区本町に移転しました。

高樹町と縁のある人物

高樹町は、かつて邸宅街であったため、多くの著名人が居住していました。皇族の崇仁親王妃百合子様は、高樹町の名前の由来となった高木子爵邸で生まれました。連合艦隊司令長官の山本五十六も、結婚直後に高樹町に住んでいました。

1905年（明治38年）には、小説家の徳冨蘆花が居住し、芸術家の岡本太郎は、両親である岡本かの子と岡本一平と共に、高樹町にあった自宅兼アトリエで生活していました。岡本家の旧居は東京大空襲で焼失しましたが、戦後も岡本太郎は同じ場所で創作活動を続けました。岡本太郎の死後、この場所は美術館・岡本太郎記念館として公開されています。

三菱財閥創業一族出身の実業家である岩崎俊男も、高樹町で育ち、近隣の青南小学校に通っていました。また、新宗教である希心会の初代会長・飯島将吉は、高樹町で洋服店を経営していました。

道路に残る高樹町の名称

1964年の東京オリンピック開催に合わせて建設された首都高速道路3号渋谷線のランプには、「高樹町」の名前が採用され、1967年（昭和42年）9月に供用が開始されました。また、六本木通りと骨董通りの交差点も「高樹町」と呼ばれており、町名が消滅した後も、その名前が道路に残り続けています。

まとめ

高樹町は、歴史と文化が色濃く残る場所であり、その名前は道路や交差点を通じて、今もなお語り継がれています。多くの著名人が住み、文化的な活動が活発に行われたこの地は、東京の歴史を語る上で欠かせない場所の一つです。

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