資財帳

資財帳とは

『資財帳』（しざいちょう）は、奈良時代から平安時代にかけて、主に朝廷が有力な寺院に依頼して作成させた財産の目録のことを指します。この文書は、「伽藍縁起并流記資財帳」とも呼ばれ、寺院の歴史や資産の詳細を記録する重要な史料として位置付けられています。

内容の概要

資財帳には、寺院が所有する堂塔の数や規模、建築様式に関する情報が含まれています。また、仏像や仏具、経典、雑具などの種類、寸法、数量、及びそれらの取得経緯なども詳細に明記されており、さらには寺領や僧侶の人数に至るまでが記録されています。このため、資財帳は古代日本における寺院の実態や仏教の受容の過程を理解するための貴重な資料となっています。しかし、多くの資財帳の原本は現存しておらず、約20通が写本や逸文として伝えられています。

歴史的背景

資財帳の起源は飛鳥時代にまで遡り、仏教の伝来と共に寺院が建立され、有力な氏族が土地や資産を寄進することで寺院が発展しました。『日本書紀』や『続日本紀』によれば、当初財産の調査は役人によって行われ、「田記」という目録が作られていましたが、寺院の管理が緩む中で不正行為が頻発しました。これを受けて、霊亀2年（716年）、元明天皇の命により、国師衆僧や国司檀越が財産の調査とそれに基づく目録『資財帳』の提出を行うことになりました。

形成の過程と変遷

資財帳は、当初は寺院の縁起とは別に作成されていたと考えられます。しかし、天平15年（743年）には、『河内国西琳寺縁起』の製作に合わせて、縁起と資財に関する情報が統合される傾向が見られました。その流れの中で、天平19年（747年）には縁起と目録をまとめた形式の資財帳『伽藍縁起幷流記資財帳』が作成されました。特に有名なのは『大安寺伽藍縁起并流記資財帳』や『法隆寺伽藍縁起并流記資財帳』などで、これらは重要文化財として位置づけられています。

この時期の資財帳作成は、官寺に関するものであり、毎年のように更新されることが求められました。しかし、平安時代の中期以降、制度の形骸化が進み、最後には資財帳の作成が行われなくなるという流れとなりました。特に貞観10年（868年）には、資財帳の作成頻度が4年ごとに改められますが、官印が捺された私的制作の資財帳も見受けられるようになり、制度の実効性が低下していきました。

主要な資財帳

• - 元興寺伽藍縁起幷流記資財帳: 天平19年に作成。原本は散逸しているが、一部は重要文化財に収められている。
• - 大安寺伽藍縁起幷流記資財帳: 同年に作成され、公文書として貴重な品が伝わる。
• - 法隆寺伽藍縁起并流記資財帳: 寛政7年（1795年）に写本が存在。
• - 阿弥陀悔過料資財帳: 東大寺の資財目録として神護景雲元年（767年）に作成され、重要文化財に認定されています。

結論

資財帳は古代の寺院に関する貴重な資料であり、当時の人民の宗教観や社会経済的な状況を探るために欠かせない存在です。その保存と研究は、我々が古代日本を理解する手助けとなることでしょう。

もう一度検索