赤坂 (花街)

赤坂花街の歴史

赤坂は、東京都港区に位置する花街で、東京六花街の一つとして知られています。その歴史は、江戸時代にまで遡ります。

江戸時代の岡場所としての誕生

かつて赤坂には、「溜池」と呼ばれる大きな池があり、その周辺には大名屋敷が立ち並んでいました。溜池は風光明媚な場所で、ホタルが飛び交うことから、人々は茶屋を開き、憩いの場として利用していました。延享年間になると、溜池の端には足軽や下男向けの娼家が数軒現れ、やがて岡場所（非公認の花街）が形成されました。赤坂の女郎は「麦飯」とも呼ばれていましたが、これは、もともと麦飯を商っていた店が売女を置いたという説と、吉原や深川を米飯に例え、それよりも劣る存在として「麦飯」と呼んだという説があります。付近には湯女風呂もあったため、紀州藩では、家臣が町湯に行くことを禁じるほどでしたが、町人は自由に岡場所を利用し、賑わいました。天保の改革によって、岡場所は一時的に廃止されましたが、嘉永時代には復活し、料理屋3軒、芸者20人の花街となりました。

明治以降の花街としての発展

芸妓を置く花街として本格的に機能し始めたのは、明治時代以降のことです。1869年に伊勢屋が初めて芸妓屋の看板を掲げ、その後、豊倉屋、春本、林家が相次いで開業しました。1883年には、芸妓屋は18軒にまで増加しました。当時は、東京二五花街の中で最も下位に位置付けられていましたが、官庁や住宅地に近かったため、下級官吏や御用商人にとって手軽な遊び場として重宝されました。赤坂は、新興地であり自由な営業形態をとっていたため、安売りで新橋などの高級な花街に対抗し、1893年頃には「赤坂主義」が安売りの代名詞となりました。
日露戦争を機に、赤坂の花街は大きく発展しました。1906年には芸妓屋は65軒にまで増加し、春本と林家の2軒はそれぞれ数十人の芸妓を抱えるようになり、料理屋の八百勘、三河屋と協力して、新橋や柳橋と肩を並べるほどの山の手花街となりました。赤坂の特徴は、一軒の店で多くの芸妓を抱えている点でした。また、近くに兵営ができ、国会も開設されたことで、軍人や政治家の利用が増えました。最盛期には、芸妓は400名に達し、特に春本の萬龍や林家のりん子といった売れっ子芸妓は、写真が完売になるほどの人気を誇りました。

衰退と現代の赤坂

関東大震災や昭和恐慌の影響を受けましたが、昭和初期には芸妓屋120軒、芸妓約400名、料理屋10軒、待合90軒を数えました。しかし、昭和30年（1955年）頃から、「待合政治」が批判されるようになり、花街は衰退していきました。バーやスナック、クラブなどの業種が増加し、2007年時点では、料亭6軒、芸妓10人前後となりました。2009年には、4年前に閉店していた料亭「金龍」が新業態の店として復活し、話題を呼びました。2016年には、赤坂芸者の育子が、花柳界として初の旭日双光章を受章しました。

赤坂は、かつては華やかな花街として栄えましたが、時代の変化とともにその姿を変えてきました。しかし、現在でも料亭や芸妓が残っており、その歴史と伝統は今も受け継がれています。

参考文献

『赤線跡を歩く2』 木村聡著、自由国民社
『東京六花街 芸者さんから教わる和のこころ』 浅原須美著、ダイヤモンド社、2007年

関連項目

あげまん (映画) - 撮影場所として使用され、主役の芸者の所作や着付けの指導を赤坂芸者の育子が担当した。
渡辺文雄 (俳優) - 妻が2016年に閉店した料亭「口悦」の女将であった。

外部リンク

東京赤坂会ホームページ
赤坂新地と林家春本の暗鬪『芸者の研究』林田亀太郎 (潮文閣, 1929)

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