志賀潔

志賀 潔（しが きよし）

志賀潔は、1871年2月7日に生まれた日本の著名な医学者および細菌学者である。彼は正三位に叙され、赤痢菌の発見者として広く知られている。彼の功績は、日本の近代化の一翼を担い、世界に通用する科学研究の基盤を築いたことで評価されている。彼の名前は赤痢菌の学名「Shigella」にも冠されており、日本人の名前が主要な病原細菌に名付けられた珍しい例となっている。

生い立ちと教育

志賀は仙台藩士の家に生まれ、幼名は直吉であった。1878年、母方の実家である志賀家の養子となり、名を潔に改名した。その志賀家は、仙台藩の藩医を務めた伝統ある家柄であった。専門の医療教育を受けるため、彼は育才小学校から宮城中学、第一高等中学校を経て、1892年に帝国大学医科大学（現在の東京大学医学部）に入学した。

医学研究の始まり

1896年に大学を卒業した後、大日本私立衛生会伝染病研究所に入所し、北里柴三郎に師事する。翌年、赤痢菌を発見し、「細菌学雑誌」にその成果を発表した。この発表によって、赤痢菌は志賀の名が冠せられることとなった。1899年には内務省の技師として伝染病研究所の第一部長を務め、1901年にはドイツ・フランクフルトに留学。

ここで、彼は著名な医学者パウル・エールリヒに師事し、特に赤色色素の治療効果を明らかにする研究を行った。この研究は、トリパンロートという薬剤名で知られるようになる。

朝鮮での活動と学長職

1920年には慶應義塾大学医学部の教授に就任し、同年に朝鮮総督府医院長および京城医学専門学校校長に転任した。1924年には国際赤痢血清委員会に参加し、BCGワクチンの株を日本に持ち帰るという重要な役割も果たしている。

1926年、京城帝国大学の医学部長に就任し、1929年には同大学総長の地位に就く。この間、彼の講演「らいの歴史とらい病の研究」において強調された内容は、問題視され、結果的に辞任することとなった。

晩年と栄典

1931年には内地に戻り、北里研究所顧問として活動を続けたが、1945年の東京大空襲で家財を失い、仙台に疎開。その後は、宮城県の別荘で静かな生活を送っていた。1957年1月25日に老衰によりこの地で他界した。

志賀の業績に対する評価は、1948年に日本学士院の会員に選ばれるなどの多数の栄典を通じて明らかである。彼は文化勲章を受賞し、名誉市民としても顕彰された。

家族と子孫

私生活では、妻のイチとの間に四男四女をもうけ、長男は台北帝国大学の教授として働いていたが、早逝した。子女も様々な分野で活躍しており、医師や弁護士など多岐にわたる職業に従事していた。

著書

志賀は、『或る細菌学者の回想』といった著作も残しており、彼の研究や思想を広く知る手がかりとなっている。

志賀潔は、近代日本医学の発展に大きな影響を与えた偉大な人物であり、その業績は今なお語り継がれている。

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