赤石敏夫

赤石敏夫氏は、1951年に岩手県盛岡市で生まれた日本の作曲家であり、音楽教育家としても多岐にわたる活動を展開しています。

経歴と音楽的背景

国立音楽大学音楽学部作曲学科を卒業後、作曲と理論を七ツ矢博資、嵐野英彦、溝上日出夫、中村太郎、島岡譲、松本民之助の各氏に、ピアノを竹山悠紀子氏に師事し、専門的な研鑽を積みました。これらの多様な師事経験が、その後の幅広い音楽活動の基盤となっています。

作曲活動

赤石氏の作曲スタイルは、特定の流派やイズムに偏らず、独自の道を歩んでいます。ご本人はプログラムなどで一貫して「音楽愛好家のための、親しみやすい音楽」を目指していると記しており、実験的な試みよりも、聴き手の心に響くエモーショナルな表現を追求する傾向が見られます。

これまでに、ソロ楽器からアンサンブル、歌曲、校歌など、幅広いジャンルにわたる多くの作品を発表しています。代表的な作品には以下のようなものがあります。

ピアノのための「回想の日々」（1975～）
東和大学附属昌平高等学校校歌（現：昌平中学・高等学校、1980）
パーカッション・アンサンブルのための「アストラル」（1988）
ヴァイオリンとピアノのための「メディテイションズ」（1988）、同「精霊の樹」（2001）
電子ピアノのための「シークエンセズ」（1990）
サクソフォンとピアノのための音楽「イド」（1998）
フルートとハープシコードのための音楽「パピヨン」（1999）
トランペットとピアノのための音楽「メランコリー」（2000）
黒田佳子の詩による歌曲：「揺らすシーソー高く低く」、「あの頃」（2002）、「今も聞こえる」（2002）、「うろこ雲」（2003）、「ほら貝の思い出」（2003）
チェロとピアノのための音楽「スティープ・ウェイ」（2002）
「疲れ果てたブッシュ '03」―オーボエとクラリネットのための（2003）
「アジアン・フレグランス」―Fl,Vn,Vc,のための（2004）
「エターナル・リカレンス」-Fl,Vn,Vc,Pfのための（2004）
「サブコンシャス」―1人の打楽器奏者のために（2004）
工藤直子の詩による2つの歌曲「海のはじまり」「あいたくて」（2005）
「ルーパ」Cl,Vn,Cb,Perc.のための（2005）
「アポカリプス」―4手によるピアノのための（2005）
谷川俊太郎の詩による3つの歌曲シリーズ（2006, 2008, 2009, 2011発表の各曲）
ピアノのための「回想の日々2006」、「漆黒の空にシリウスは輝く」など（2006）
「アリウェン」-木管五重奏のための（2007）
「ブレス・アブソルート」-クラリネットとピアノのための（2007）

音楽教育への貢献

作曲活動と並行して、赤石氏は日本の音楽教育全般にわたって新しい提案を積極的に行っている教育者でもあります。市中の音楽教室から音楽大学に至るまで、幅広い現場を見据えた活動を展開しています。

特に、英国王立音楽院連合が実施する「The Associated Board of the Royal Schools of Music」の「英国王立音楽検定」の日本国内における普及推進に尽力しています。また、現代の音楽家にとって不可欠な「アート・マネジメント」の必要性を強調し、教育現場でのテクノロジーの積極的な活用についても提言しています。国内のみならず、海外の音楽教育事情にも精通しており、その知見を日本の教育改善に生かしています。2000年からは「音楽検定」の開発委員も務めています。

職歴と所属団体

教育者としてのキャリアは、尚美学園作曲科の助教授から始まりました。その後はローランド株式会社にて、音楽教育におけるテクノロジーの応用研究に取り組みました。現在は赤石音楽研究室の代表を務める傍ら、相愛大学音楽学部教授、大阪芸術大学の非常勤講師として後進の指導にあたっています。

また、音楽関連の様々な団体に所属し、日本の音楽文化振興に貢献しています。所属学会・協会は、日本現代音楽協会、日本ソルフェージュ研究協議会、全日本ピアノ指導者協会、日本電子キーボード音楽学会など多岐にわたります。さらに、日本作曲家協議会の理事も務めています。

主な著書

音楽理論や教育に関する著書も多数執筆しており、音楽学習者や指導者にとって貴重な参考書となっています。主な著書には、いずれも現在も刊行が続いているものがあります。

「ソルフェージュ入門（上・下）」（KMP、1981年初版）
「和声法」（財・日本音楽教育文化振興会、1986年初版）
「新訂・独習聴音問題集（上・下巻）CD-R付」（全音楽譜出版社、1996年初版、2010年改訂）
* 「視唱ステップ・アップ」（全音楽譜出版社、共著、2008年初版）

赤石敏夫氏は、作曲家として親しみやすい音楽を追求する一方で、音楽教育の現状に対する深い洞察を持ち、その発展のために精力的に活動を続けている人物です。

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