赤線基地

映画『赤線基地』について

『赤線基地』は、1953年に公開された日本のドラマ映画です。谷口千吉が監督を務め、三國連太郎、根岸明美、中北千枝子、金子信雄などが出演しています。この作品は、米軍基地問題を、基地周辺で生活する人々の視点を通して描いており、その反米的なテーマから、公開当時一時上映が見送られるという問題作となりました。

映画の冒頭には、以下の文章が表示されます。

この映画は誰を非難し誰に抗議するというものではありません

基地周辺に生れるさまざまな不幸を無くしたいための私達自身の反省の記録であります

脚本を担当した木村武（馬淵薫）は、ヘラルド・トリビューンの特派員による誇張報道がきっかけで、日本でも大々的に報道され、東宝社長の小林一三の判断により公開中止になったと語っています。その後、木村は身を潜めていたため、作品が再び公開されるまでの経緯には関わっていません。

ストーリー

物語は、主人公の河那辺浩一が、10年ぶりに中国から故郷の御殿場近くの村に帰還するところから始まります。しかし、そこは米軍基地の村へと変貌していました。家族は父以外は健在でしたが、離れはパンパン（売春婦）である由岐子（ジュリー）に貸し出され、妹は縁談を断られ、弟はヒロポンを売るチンピラになっていました。さらに、浩一が心の支えとしていた昔の恋人も、黒人の子供を連れたヒロポン中毒のパンパンになっていました。故郷の変わり果てた姿に失望した浩一は、翌日、由岐子と共に東京へ向かうことを決意します。

キャスト

河那辺浩一 - 三國連太郎：中国戦線から帰還した長男。
河那辺杉男 - 金子信雄：次男で役場勤務。既婚者。
河那辺時子 - 広瀬嘉子：杉男の妻。
河那辺健吉 - 日惠野晃：三男でチンピラ。
河那辺靜子 - 川合玉枝：長女。
河那辺文子 - 青山京子：次女で女学生。
河那辺敏男 - 伊東隆：四男（末っ子）で小学生。
河那辺お徳 - 英百合子：浩一の母。
河那辺重作 - 高堂国典：浩一の祖父。
由岐子（ジュリー） - 根岸明美：米兵相手の娼婦。
ハルエ - 中北千枝子：浩一の昔の恋人。
上西 - 小林桂樹：小学校教師で、浩一の旧友であり静子の婚約者。
順吉 - 十朱久雄：上西の父で、息子と静子の結婚に反対している。
バブ - ボッブ・ブース：由岐子の恋人である米兵。

作品のテーマ

『赤線基地』は、戦後の日本における米軍基地問題と、それが人々の生活や価値観に与えた影響を、生々しく描き出しています。基地の存在によって引き起こされる家族の崩壊、売春、薬物中毒といった社会問題を通して、戦争の傷跡と、米軍基地がもたらす負の側面を深く掘り下げています。

関連情報

赤線基地 - 日本映画データベース
赤線基地 - allcinema
赤線基地 - KINENOTE
Akasen kichi - IMDb（英語）

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