走性

走性（Taxis）

走性（そうせい、英語: taxis, pl. taxes）は、生物や細胞が特定の方向性を持つ外部刺激に対して示す生得的な行動様式です。これは、生物が環境中の刺激を感知し、その刺激の方向に沿って移動したり、特定の方向へ体を向けたりする行動を指します。

走性、定位、反射の違い

走性を理解する上で重要な概念として、定位と反射があります。

定位（ていい）: 生物が自身の体軸を、環境中の特定の方向に向けることを指します。定位行動は、定位した生物が目標地点に到達するために一定距離を移動する行動を含みます。
走性: 定位行動のうち、刺激の方向と一定の関係を持つものを指します。走性は生得的な行動の一つです。
反射: 個体全体としての行動ではなく、個体の一部分が示す比較的単純で定型的、かつ無意識的な行動です。したがって、走性とは異なります。

また、植物における屈性、傾性、膨圧運動などは、走性や定位運動とは区別されます。

走性の例

走性の具体的な例として、ミドリムシの行動が挙げられます。ミドリムシは光を当てると光源に向かって移動します。この行動は正の走光性（positive phototaxis）と呼ばれます。光が刺激となり、生物が光の方向に移動するため、「走光性」という名前がついています。刺激源に向かう場合は「正」、反対方向に移動する場合は「負」を付けます。

その他にも、光の届きにくい海中や濁った湖に生息するプランクトンは、負の重力走性を示すと考えられています。これは、生命維持に必要な行動ですが、無脊椎動物には重力感知器官がないため、未知の重力感知器官の存在が推測されています。

走性の分類

走性は、刺激の種類に応じて以下のように分類されます。

走圧性 (barotaxis): 圧力に対する反応
走化性 (chemotaxis): 化学物質に対する反応
電気走性 (galvanotaxis): 電流に対する反応
走磁性 (magnetotaxis): 磁場に対する反応。走磁性細菌は、磁鉄鉱微粒子を持ち、地磁気で細胞の向きを変えて泳ぎます。
走地性 (geotaxis): 重力に対する反応。タラバガニの幼生では、走光性と組み合わさることがあります。
走水性 (hydrotaxis): 水分に対する反応
走光性 (phototaxis): 光に対する反応
走流性 (rheotaxis): 水流に対する反応
温度走性 (thermotaxis): 温度に対する反応
接触走性 (thigmotaxis): 接触に対する反応

感覚器官と走性の種類

走性は、生物が持つ感覚器官の種類によっても分類できます。

屈曲走性 (klinotaxes): 生物が反応の方向を決定するために、絶え間なく環境のサンプルを採取する
転向走性 (tropotaxes): 左右対称の感覚器を用いて反応方向を決定する
目標走性 (telotaxes): 転向走性に似ているが、定位運動の確立に一つの器官で十分

走性は、生物が環境に適応し、生存するために重要な行動様式です。様々な刺激に対する走性を理解することで、生物の行動原理や生態をより深く理解することができます。

参考文献

Kendeigh, S. Charles. 1961. Animal Ecology. Prentice-Hall, Inc., Englewood Cliffs, N.J., 468 p.
吉里勝利ほか 『新課程版 スクエア 最新図説生物』 第一学習社 2022年 223頁

関連項目

走触性（haptotaxis）
en:durotaxis
動性

外部リンク

走性(そうせい)とは - コトバンク

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