超大型光赤外望遠鏡

超大型光赤外望遠鏡：宇宙の謎に迫る巨大な眼

超大型光赤外望遠鏡（ELT: Extremely Large Telescope）は、宇宙の謎を解き明かすために開発が進められている、画期的な天体望遠鏡です。その特徴は、分割鏡技術を用いた巨大な集光力と、高い解像度にあります。既存のケック望遠鏡や超大型望遠鏡VLT（口径10m以上）をはるかに凌駕する観測能力で、これまで観測不可能だった暗い天体や、遠い宇宙の現象を捉えることが期待されています。

ELTの技術：巨大鏡の挑戦

ELTを実現するためには、巨大な鏡を製作・制御する高度な技術が必要です。既存の大型望遠鏡では、単一の巨大な鏡を製作することが困難なため、複数の小さな鏡を組み合わせる「複合鏡方式」が採用されています。この方式には、全天掃天を目的とした低F値の望遠鏡と、口径制限を超える集光力を目指す望遠鏡の2種類があります。

ケック望遠鏡は、六角形の小さな鏡を多数組み合わせることで10mの口径を実現しています。一方、VLTは複数の単一鏡からなる望遠鏡を組み合わせ、光干渉技術（開口合成技術）によって高い解像度を得ています。ELTでは、これらの技術をさらに発展させ、より高性能な望遠鏡を目指しています。鏡の支持には精密なアクチュエータ技術、鏡同士の接合には高度な技術が用いられます。

日本のELT計画：次世代への展望

日本では、国立天文台が2005年度からELTプロジェクト室を設置し、次世代大型天体望遠鏡の開発を検討しています。計画では、口径30mの望遠鏡を目指し、すばる望遠鏡で培われた技術を活かします。特に赤外線観測に重点を置くことで、宇宙膨張による赤方偏移で波長が伸びた遠方天体の観測を目指します。

この計画の最大の目的は、現在の8～10mクラスの望遠鏡では観測できない暗い天体の観測と、高解像度による精密な観測です。宇宙誕生直後の天体形成過程を解明するため、赤外線観測による効率的なデータ収集・解析が重要になります。シミュレーションによるモデル計算では、宇宙誕生直後の天体形成過程の再現に成功しており、ELTを用いた観測で、その実態を解明することが期待されています。

ELT計画の現状と今後の展開

ELT計画は現在も検討段階であり、ファーストライト時期や稼働時期は未定です。TMT計画やOWLプロジェクトなど、国際的な連携も視野に入れ、情報交換や技術仕様の検討を進めています。設置場所の選定や開発計画の策定、予算要求などは、技術仕様が確定した後に行われます。

国立天文台は、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計やASTRO-G計画など、他のプロジェクトにも注力しており、これらの成功後にELT計画の本格的な推進を予定しています。

関連プロジェクト

ELT計画は、世界中で進められている大型天体望遠鏡計画の一部です。アメリカ合衆国のTMT計画やGMT計画、ヨーロッパ南天天文台のOWL望遠鏡計画など、国際的な協力体制のもとで開発が進められています。日本国内でも、岡山天体物理観測所での3.8m口径複合鏡型望遠鏡計画や、東京大学アタカマ天文台での6.5m口径単一鏡望遠鏡計画など、様々な取り組みが行われています。これらの計画と連携し、日本のELT計画が成功することを期待しています。

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